一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2020年07月04日(土)付 朝刊


■紙面授業 数学 論理的思考力養う 御殿場西高・桑迫雄大先生
 「数学は何に使うの?」。教員になってまだ10年もたたないのですが、このような質問を何度も耳にします。中学校・高校で学習する数学は、移動する点Pについて考えたり、2乗してマイナス1になる虚数iについて考えたりと、算数とは違って日常生活から離れていることが多いのです。数学で学んだ知識を直接利用する人は限られています。「では、数学は習わなくてもいいのではないか」という問いには、そうではないと答えます。
 数学では「~を証明せよ」「(条件)を満たすaの値を求めよ」といった問題をよく目にします。答えが与えられていて、その過程を問われることが多いからです。これらの問題は一つ一つの工程で「~であるから、~になる」という根拠のある道筋を立てながら、論理的に解いていきます。根拠があいまいなまま進めてもどこかで矛盾が生じたり、欠点が見つかったりします。このように数学では、論理的に解くということを意識します。そのため、数学を学習していけば論理的思考力を養うことができるはずです。
 今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中が混乱状態になり、新聞には連日関連のニュースが掲載されています。非常事態の中では、原因と結論が結びついていないデマ情報に惑わされ、それによって日用雑貨の買い占めなど感情的な行動が目立ちました。自身を守ろうとする行動が他人を傷つけてしまい、多くの混乱を招いたりしてしまいます。
 コロナウイルスによる社会の混乱は誰もが初めての経験です。今後も、さらに初めてのことを経験するでしょう。人々が協力して生活しなければならないときこそ、感情的ではなく数学で学ぶ論理的な思考による正しい行動が大切になります。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(40)隠れた問題から気付きへ
 新型コロナウイルス関連ニュースが、連日報じられています。その中に「環境」分野に関するものが潜んでいます。教室で、「地球温暖化に関する記事を探してみよう」と呼び掛けました。
 夏の暑さが年々厳しくなり、熱中症対策が大切になっています。しかし今夏は、新型コロナ対策としてのマスク着用が求められ、熱中症リスクを高める、と指摘する記事に多くの生徒が関心を寄せました。生徒たちの感想は「こまめな水分補給などの熱中症対策を心掛け、健康管理に留意したい」と冷静です。
 個々のライフスタイルを工夫することも大切ですが、地球規模で考える対策にも目を向けさせたいものです。
 新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停止で、二酸化炭素排出量が減少する、と試算する記事に興味を持った生徒もいます。地球温暖化防止のために新しい生活様式をどのように生かすか、ということが、今後の課題と気が付いたようです。
 新聞を読み、考え、感想を書くという一連の作業を通じ、今年遭遇した局面を若い生徒たちが、柔軟な思考力で前向きに乗り切ることを期待しています。
 (清水西高・吉川契子)