一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=人思いやる大切さ学ぶ 掛川・桜が丘中 「コロナ差別」防ぐ道徳授業 新聞活用し意見交換

2020年08月01日(土)付


 NIE実践指定校の掛川市立桜が丘中で休校期間が明けた5月下旬、新聞を使い「コロナ差別」を防ぐ道徳授業が行われた。全校生徒が四つの新聞記事から差別が起きる理由を考え、人を思いやる大切さを学んだ。
 
 休校期間中に発熱者待機部屋を校内に設置した同校は、県内外で相次ぐ新型コロナウイルス感染症に対する差別が学校でも起こる可能性があると考え、授業を企画した。記事は長距離トラック運転手が差別を恐れる話、病院スタッフがタクシーの乗車拒否を受けた事例、感染者の家に落書きがされた被害、県外ナンバーの車に傷がつけられた事件の四つ。生徒はそのうち一つの記事を読み、感想を発表した。
 生徒からは「病院スタッフなど感謝しなくてはいけない人を傷つけるのはよくない」「人を傷つけているのはウイルスではなく人間だ」などの意見が上がった。さらに「自分が感染したくないから」「不安に思う気持ちがあるから」など差別が起こる仕組みも分析した。2年の鈴木煌也さん(13)は「感染した人はなりたくて感染者になったわけではない。差別をする人は相手を大切に思う気持ちが足りない。全ての人に感謝する気持ちを忘れないようにしたい」と意見を述べた。
 意見交換後、教員は生徒に空き教室に設置した発熱者待機部屋の写真を見せた。「クラスの仲間がこの部屋にいたらどうするか」という教員の問いに、生徒は「普段通りの態度をとる」「心配して嫌がるような発言は絶対にしない」と答えていた。
 NIE担当の石神克海教諭(27)は「生徒にはコロナに対する恐怖心があると思うが、怖さから人を差別してはならない。弱い心を乗り越え、他者を思いやって生活していくことを考えさせたかった」と授業を計画した狙いを語った。複数の記事を活用したことについては「生徒の視野が広がり、タイムリーな話題をさまざまな角度から考えることができたのでは」と手応えを感じたようだ。
 

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新聞記事を読み差別が起こる理由を考え、意見を共有する生徒=掛川市立桜が丘中
 

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空き教室に設置された発熱者待機部屋
 
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■紙面授業 化学 進化する単位の定義 磐田東中・高・外山昌介先生
 新型コロナウイルスが流行しなければ、ちょうど今ごろ、東京五輪・パラリンピックで盛り上がっていたことでしょう。何年もかけて鍛えた選手たちの100分の1秒や、1センチを競い合う熱い姿を早く見たいものです。
 さて、その時間や長さの定義が変更されたのはご存じでしょうか。世界では、国際的に統一された時間や長さ、質量などの七つの単位があります。2019年5月20日からその単位の定義が新しくなりました。例えば秒の定義は、「セシウム周波数Δν、すなわち、セシウム133原子の摂動を受けない基底状態の超微細構造遷移周波数を単位㎐(s-1に等しい)で表したときに、その数値を9192631770と定めることによって定義される」となりました。一度読んだだけでは、理解できないような内容です。以前の定義は、地球の自転や公転に基づくもので、1日の86400分の1を1秒とする、などでした。しかし、地球の運動周期も微妙に変動していることが判明し、もっと正確な1秒が必要となりました。今回の変更で1秒は、「セシウム133原子が91億9263万1770回振動するのにかかる時間」と新しくなりました。では、なぜセシウムが選ばれたのでしょうか? なぜ、9192631770回の振動なのでしょうか? 調べてみると面白いですよ。
 普段、何げなく使っている秒やメートル、キログラムといった単位は、不確かなものを排除して絶対的な基準を作り、細かな定義の上に成り立っているのです。今ではさらに研究が進み、300億年に1秒しかずれない時計がストロンチウムを使って開発されています。また定義が変更される日がくるかもしれませんね。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(41)記事読み 発想力育てる
 書く力の重要性は近年、とみに増している。それは入試ではもちろんのこと、「生きる力」にもつながる大事な力だ。しかし小論文指導をしていると、何を書いたらよいか分からないという生徒、そもそも課題文を読み取れない者などが続出である。
 そんな問題の解消のため、新聞記事を読ませ、感想を書かせている。新聞に載っている写真を見て、感想を書かせることもある。「感じる力」を引き出すためだ。「発想力」のウオーミングアップである。
 例えば、東日本大震災の「奇跡の一本松」の写真。あの写真を見て、「前の姿を知らない人からすれば、この一本松は希望の象徴に見えるかもしれない。でも、7万本もあった前の姿を知っている人からすれば、津波の威力を証明する以外の何物でもない」という感想があった。このように立場や視点を変えてみると違って見える。正解・不正解はないので自由に発想することから始め、自分なりに表現することの楽しさを味わってほしい。
 入試に使えるか否かを考えず、世の中のあらゆることに興味・関心を持たせたい。そのために新聞は有効なツールだ。
 (常葉大常葉中・高・塚本学)

 
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■NIE実践校 県内新規4校 本年度 日本新聞協会
 日本新聞協会はこのほど、2020年度のNIE実践指定校535校を決定した。新規指定校は227校で、県内からは県NIE推進協議会が推薦した新規4校と継続10校の計14校が認定された。
 県内の新規校は、三島南中、静岡大河内小中、掛川桜が丘中、清水特別支援学校。継続校は、2年目が伊豆の国韮山南小、吉田自彊小、浜松城北小、湖西白須賀小、小山中、浜松西高、常葉大橘中・高。3年目が西伊豆田子小、静岡清水飯田小、清水西高。
 実践期間は原則2年間で、新聞を活用してもらうため同協会と新聞社が購読料を補助する。

 

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■新聞感想文コンクール 児童・生徒の作品募集 来月、締め切り
 静岡新聞社・静岡放送は、児童・生徒を対象にした「しずおか新聞感想文コンクール」の作品を募集している。
 同コンクールは、児童・生徒が新聞を通じて活字に親しみ、読解力と表現力を養い、地域や社会への関心を高めることを目的に行われている。対象は小学4年生から高校生まで。小、中、高の3部門に分かれて審査し、上位入賞作品は新聞紙面に掲載する。応募者全員に参加賞を贈る。
 応募概要は次の通り。
 【課題】2020年1月1日~8月31日の新聞記事を読んでの感想
 【締め切り】9月7日必着
 【応募方法】応募要項を取り寄せて確認する。
 【問い合わせ・要項請求先】静岡新聞社読者部内コンクール事務局<電054(284)8984>へ。