一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=自宅学習にも新聞を スクラップ 記事と自分 結び付けて コラージュ 色、質感 選ぶ練習 静岡井宮小 中村都教諭 寄稿

2020年10月03日(土)付 朝刊


 新型コロナウイルスの感染対策による休校や外出の制約は、自宅学習に取り組むきっかけになった子どもたちも多いことだろう。家で過ごす時間が多くなれば、じっくり新聞に親しむ好機。自宅で気軽に取り組める新聞を活用した学習を、NIEアドバイザーの静岡井宮小教諭、中村都さんに紹介してもらった。

 

 コロナ禍でも家庭でできる、新聞を使った二つの「自分の学び」を紹介します。

 まずは、切り抜いた記事を基に、自分の思いや考えを書き込んでいく新聞スクラップです。記事の内容と自分とを結び付けて、そこから見えてくるもの・考えられることをまとめていくものです。

 最初は、自分が気になる記事を集めていきますが、次第に自分がどのような分野に興味・関心があるのかが分かってきます。それが一つの分野に集中しているとすれば、次回からはそこに注目して見ていけばいいのです。例えばそれが食の分野ならば、今話題の、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)から食品ロスにつなげていくことができます。窓口を狭めると、事実を深く掘り下げて考えるために、記事から離れ新聞以外の手段での情報収集が始まります。それが自分の学びとなるのです。

 二つ目は、新聞から色鮮やかな写真や広告を好きな形に切り取りレイアウトする「新聞コラージュ」です。従来のコラージュと違い、そのままの形を切り抜くわけではないので、新聞という素材のどの部分から、どんな形を切り抜こうかと考えるのです。それは色・質感・形という情報を取捨選択する情報リテラシーとなり、幼い子どもたちでも十分に取り組めるNIEと言えるでしょう。

 「この洋服の模様はクラゲの体に使えるよ」「この丸いチョコレートは魚の目になるね」。このような会話を交わしながら、親子で取り組んでみると楽しいですね。

 幼稚園・保育園児や小学校低学年にお勧めのテーマは、「たのしいうみのなか」です。「スイミー」(レオ・レオニ作)の絵本を参考に海の中の様子がイメージできると、子どもたちは材料集めに動きだします。

 中学年以上は、自分のイメージをより明確に表現するために、新聞紙特有の柔らかな紙質や微妙な色合いを利用し、細かい作業に挑戦してみてください。きっと楽しい学びになるはずです。

 

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中村都教諭が作成した新聞スクラップ例。SDGsをテーマに記事から考えをまとめた

 

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海中をテーマに、新聞素材でコラージュした中村教諭の作品

 
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■紙面授業 家庭 食品選択の学び方 加藤学園高 坪内春花先生

 都心を中心に街でよく見かけるようになったウーバーイーツ。今年6月、静岡、浜松市の一部地域限定ではありますが、ついに県内でもサービスが開始され、新聞でも大きく取り上げられました。
 ウーバーイーツをはじめとするデリバリーやお持ち帰り文化が定着しつつある現代では、食べ物に簡単にアクセスできます。家にいながらスマートフォン一つで、家庭で作るのは難しい本格料理から海外の食事まで、簡単に手に入るようになりました。
 現在、高校生が使用している家庭科の教科書には、「食品の選択」という項目があります。期限表示やアレルギー表示、栄養成分表示などを学びながら、より良い食品選択ができるようになろうという内容です。この授業では、コンビニ弁当や菓子パンのパッケージなどを見て、一日に必要なエネルギー量と比較をしてみたりします。しかし、ウーバーイーツで頼んだ商品にはこの食品表示の記載はありません。栄養成分はおろか、期限表示の記載すらない場合も多いのです。
 実は現行の法律では、外食店でのデリバリーやテークアウトは店舗でのメニュー表示と同じ扱いとされ、食品表示法に基づく表示義務はありません(店舗内調理施設で調理した場合)。そのため、消費者は栄養成分やその他の項目を知らないまま、商品名や「映え」を意識した写真から注文をすることになります。
 時代が変化する中で生まれる、生活を助けるアイテムは活用すべきです。しかし、その中で健康な生活を送るためには、根本は見失わず、時代に合わせた生き方や学び方が必要なのかもしれません。
 私も、「映えた写真からバランスの取れた食事を選んでみよう!」なんて授業をしたら、面白いだろうかと、日々の生活の中で若者に合った学び方やネタを探し続けている最中です。
 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(43)新聞の面白さに気付く

 「これで、勝負しない?」。妻の手には毎週土曜日の静岡新聞別刷り「とっとこ静岡」に掲載されている数独の問題。試しにやるも悪戦苦闘。ほほ笑む妻の姿に悔しさ倍増といったところでした。私事ながら、このささいな出来事が、筆者のNIE活動に大きなヒントとなりました。

 例えば、先日高校1年生の政治経済の授業で安倍首相辞任会見の新聞記事の比較を行いました。生徒に意見を求めると、新聞による安倍首相の写真の大きさの違いや、政権への評価の記述の違いなどに関する発言もあり、非常に丁寧に生徒たちが記事を読み込んでいることが分かりました。

 数独の例と同じく、新聞には読者の興味をひくさまざまな要素があり、読者は新聞の面白さに気付く時間が少ないだけなのでは、と思いました。

 そこでこんな取り組みはどうでしょう。勤務校の新聞掲示板に今年、「社会の縮図 新聞を、味わおう!」という言葉を筆者は貼りました。1982年にコピーライターの糸井重里氏が世に出した有名な言葉「おいしい生活。」のように、新聞を生徒が味わえる、そんな現場を生み出していきたいと思っています。

 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)