一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載

2020年12月05日(土)付 朝刊


■紙面授業 宗教 身近な環境に関心を 静岡サレジオ高 内藤紗絵先生

 故郷の匂いが思い出せなくなった。大学進学と就職を機に地元を離れ、15年ぶりに戻ってきた私は、最近ふと、このことに気付きました。その匂いは、サクラエビを天日干しした時の匂いです。今でも富士川の河川敷で見られる光景ですが、幼少期は家の近所でも天日干しされているサクラエビが空き地を赤く染め、その匂いが一帯に広がり季節を感じる瞬間の一つでした。しかし、今ではその様子が近所では見られなくなり寂しさを感じます。

 近年、駿河湾の漁港を騒がせるサクラエビの水揚げ量の減少。そのニュースは、私が働いていた九州の職場にまで届きました。本質的な原因が何かはまだ解明されていません。駿河湾に流れ込む河川やその沿岸にダムなどが建設されたことで、川から駿河湾に流れ込みサクラエビの餌となっていた植物プランクトンが減っているのではないかという説もあり調査中です。こうした経過を追うニュースが度々、新聞紙面で報じられています。

 昨年、キリスト教ローマ教皇フランシスコが訪日されました。その根本的なテーマとなった回勅「ラウダート・シ」は、2015年に環境問題に対するカトリック教会の責任について述べられたものです。全ての命は神によって創造され、その中でも人間は神の似姿に造られています。そのため、人間には地上のものを従え、守る責任があります。しかし、人間は暮らしを良くすることだけを考え、環境への配慮が欠けてしまいました。その結果、改善が迫られています。

 私は故郷の匂いを忘れたことによって、改めて身近な環境問題に目を向けることができました。もしかしたら、それは私たちがともに暮らす地球からのメッセージだったのかもしれません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(45)はやぶさ2 軌跡紹介を

 飛行時間6年、52億キロの長旅を経て、探査機「はやぶさ2」が地球に帰って来ます。6日未明に、小惑星りゅうぐうの石などが入っているとみられるカプセルを、オーストラリアに投下予定です。世界が注目しているプロジェクトであり、帰還を伝える新聞を教室に掲示し、紹介したいものです。

 天文分野の話題に興味を示す児童生徒は多いものです。この機会に、今までスクラップしていた記事を活用しましょう。理科の授業はもちろん、特別活動で取り上げることができます。

 手元に、2014年のはやぶさ2打ち上げ前や、タッチダウン成功時の感動の記事があります。折々に新聞はその軌跡を取り上げてきました。長期間に及ぶ旅路を振り返ると、宇宙の壮大さを実感できます。科学者の挑戦魂にも関心を向けさせたいものです。

 11月12日に亡くなられたノーベル物理学賞受賞者、小柴昌俊先生の追悼記事や、日本などの国際チームがブラックホール初撮影といった宇宙分野における日本人の活躍を報じる記事も示して、天文学者を夢見る子どもたちの未来にエールを送りましょう。

 (清水西高・吉川契子)