一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=記事きっかけ エコ実践 新聞で関心広く「社会問題 挑戦したい」 20年度新聞感想文 最優秀 浜松北部中・桂花穏さん

2021年06月05日(土)付 朝刊


 新聞は社会への視野を広げるきっかけ―。2020年度しずおか新聞感想文コンクールで最優秀賞を受けた浜松市立北部中1年の桂花穏さん(12)=受賞時は浜松市立泉小6年=の日常には、新聞が身近な存在になっている。6年生のころに読んだ「ごみ問題」に関する記事をきっかけに、実生活でも環境問題に対する活動に取り組むようになった。

 新聞を読むようになったのは4年生の時に学校の宿題で始まった自主勉強ノート。授業や私生活で興味のあった話題を自分なりにノートにまとめる作業を通じて、新聞を読み、切り抜きなども行った。今では、空いた時間を見つけては静岡新聞の日曜別刷り「週刊YOMOっと静岡」などに目を通し、見聞を広めている。
 6年生の1学期の授業で、ごみや地球温暖化などの環境問題について学び、「ほかにはどんな問題があるのだろう」と興味が膨らんだ。
 ある日、紙面を眺めていると、海中に沈んだ細かいプラスチックごみの分析効率を上げる新技術の記事が目にとまった。そこからプラスチックごみに関心を抱いた桂さんは「自分でもできることは何か」と考え、その気付きを感想文にまとめた。コンクール受賞以降、実際にプラスチックをなるべく使わない生活を心掛けたり、休日に浜名湖などを訪れてごみを拾ったりするようになった。
 中学生になって生活環境が変わっても、社会の情報を知る一つのツールとして新聞を活用することに変わりはない。桂さんは「少し目を通すだけでも、たくさんの知識が身に付くし、家族との話題も増える」と新聞の大切さを語り、「今後も、社会問題に対して自分なりに挑戦していきたい」と笑顔を見せた。
 
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本紙の日曜別刷り「週刊YOMOっと静岡」などを通じて見聞を広めている桂花穏さん=5月、浜松市中区
 
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■「しずおか新聞感想文コンクール」作品募る
 静岡新聞社は「しずおか新聞感想文コンクール」の作品を募集している。読解力や思考力、表現力を養い、地域への関心を高めることが狙い。対象は県内の小学4年生以上で、募集は小学生、中学生、高校生の3部門。2021年1月1日から8月31日までの新聞記事を読んだ感想を送る。締め切りは9月6日必着。詳細は静岡新聞社読者部内、同コンクール事務局<電054(284)8984>へ。
 
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■紙面授業 数学 公式誕生の背景学ぶ 数学 浜松学院中・高 村木晴絵先生
 最近、テレビなどでよく目にするようになった「オンラインツアー」や「バーチャルツアー」。インターネットを通じ現地を体験できる仕組みで、新聞紙面でも紹介されています。私も今年のゴールデンウイーク、ついに「世界遺産・エジプトのピラミッド・オンラインツアー」を体験しました。
 エジプトといえばピラミッド、スフィンクス、ラクダなど、連想できるものは数多くありますが、ナイル川もその一つです。ナイル川が氾濫するたびに土地の境界線をつくらなければならなかったので、土地の測量技術が発展したといわれています。「3辺の長さが3対4対5の三角形は、直角三角形になる」ことを利用して、縄に結び目をつくり土地の面積を測量するという考え方は、中学3年生で学ぶ「三平方の定理」を指しています。つまり、今から何千年もの昔に、既に数学の知識が用いられていたということが分かります。
 「数学が将来何の役に立つのか」。生徒たちに何度も尋ねられましたが、これは誰もが直面する壁です。
 現に、私自身も疑問に感じたことがありましたが、学生時代「数学=mathematics」の語源はギリシャ語で「mathemata(マテーマタ)=学ぶべきもの」と知り、将来役に立つのかを考えるより「数学は数楽、今学ぶことを楽しもう」という気持ちに変化していったのを覚えています。
 中学生や高校生は、数と式や関数、図形などの「数学」に取り組み、その中で数多くの定理や公式を学んでいますが、それらがどのような文化的背景、社会的背景から生まれたものなのかを学ぶ機会は多くありません。しかし、それを学べば、数学は社会生活を送る上で重要な役割を果たしていることを知り、違う角度から数学を楽しむことができるのかもしれません。

 県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。
 
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NIEアドバイザーのワンポイント講座(50)柔軟発想で教科と関連
 理科の授業で扱う地球の形や内部構造は、地震、火山を理解する上で重要である。
 函南町特産の「函南西瓜(スイカ)」目ぞろえ会の記事(静岡新聞5月25日付朝刊)に「たたいた音で分かる実の詰まり具合」とある。地震、火山は人間生活に影響を与える。地球深部を掘削して調べたいが、技術的に困難である。そこで授業で「スイカをたたいて中身を推定するように、地球内部は地震波の伝わり方を観測して調べている」と説明すると、硬い学習内容が軟らかく感じられる。
 地球表面のプレートが動いてできる「海溝」は、巨大地震の震源となる。地球最深の「マリアナ海溝」は、ニホンウナギの産卵場所、と浜名湖でのウナギ放流記事(静岡新聞2020年10月30日付朝刊)にある。「日本から約2千㌔南のマリアナ海溝で産卵し、ふ化した稚魚が黒潮に乗って日本沿岸にたどり着く」という。はるか遠くの海溝が身近に感じられる記述だ。
 授業は教科の専門性にこだわりがちだが、「農業」「漁業」と単純な思考で分類せず、柔軟な発想で新聞記事を活用したい。学習が身近な生活と関連することを発見させ、興味を持たせられるだろう。
 (静岡城北高・吉川契子)