一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=読解力と表現力 新聞から 新規実践校が抱負

2021年10月02日(土)付 朝刊


■読解力と表現力 新聞から 新規実践校が抱負

 日本新聞協会はこのほど、2021年度のNIE実践指定校を全国で541校決定した。県内では、県NIE推進協議会が推薦した新規8校、継続6校が決まった。コロナ下で授業計画に工夫が求められる中、新聞を活用するNIEに意欲をみせる新規校に抱負を寄せてもらった。

 考えを深めるために 河津町立南小 土屋晃子先生
 本校は新規校として2学期から本格的に始動できるように、少しずつ新聞に親しむ活動から進めてきました。文字探しのようなゲームで新聞に触れる活動、生活科に関連させて、夏を感じる写真を探す活動、お気に入りの記事を探し紹介し合うなど、できることから始めてきました。新聞をよりよく活用し、自分の考えを深める子どもの育成に向けて、教職員一丸となって取り組んでいきたいと思います。

 毎週「NIEタイム」 静岡市立中島小 中村雄真先生
 本校では現在、どの学年の子どもたちも新聞に親しむことができるように、新聞の写真や、教師が気になった記事の切り抜きを昇降口に掲示しています。また、毎週NIEタイムを設け、新聞の内容を読み取ったり、興味のある記事についてまとめたりする活動をしています。今後は子どもたちが授業を通して社会とつながっていくことと、新聞に興味をもち、もっと親しんでいくことを狙い、授業でも積極的に新聞を活用していきます。

 大自在写し作文上達 牧之原市立萩間小 絹村雅昭先生
 「先生、コロナを防ぐには、『ふしょ...不織布マスク』がいいらしいよ」。子ども新聞の好きな児童の一言をきっかけにしてクラス共通の話題が生まれました。
 「前は苦手だった120字でまとめる短作文問題が書けるようになってきたよ」。「大自在」の視写を続けて、明快な文章にたくさん触れたおかげで、読解力、作文力が大きく伸びた生徒の喜びの声です。
 このように、これまでも新聞を通して幾多の楽しい授業や交流に出合いました。今回の実践指定をきっかけとして、さらなる魅力を追究、活用していきたいと思います。

 慣れ親しむ環境整備 浜松市立上島小 山下裕貴先生
 本校は夏季研修でNIEについて理解を深めて、2学期以降にさまざまな学習活動で取り組めるように準備を進めています。これまでに図書室には子ども新聞が置いてあったものの、あまり読まれていない実態があります。まずは、教職員と子どもが多くの新聞記事に触れ、慣れ親しむことが大切だと考えます。そのような環境を整備しつつ、特に学習において、学びを深めるための手立てとしてよりよい活用方法が見つかるように取り組んでまいります。

 選び活用する力必要 静岡大成中 片井奈美先生
 現在の情報化社会の中で、子どもたちは手元のスマホを使い、何でも簡単に調べることができるようになりました。しかし、正しいものを選択し、活用する能力は未熟です。新聞の表現は難しいですが、それを自分で調べ、内容を読み解きながら、正しい情報を活用する力を身に付けてほしいと思っています。
 NIEの活動をきっかけに、自分を取り巻く社会へ目を向け、子どもたちの視野が広がっていくことを期待しています。

 地域の人の活躍 注目 浜松学芸中・高 大場裕幸先生
 本校は中学開校以来、社会科でスクラップブックリレーを実施しています。内容は「地元の音楽発表会」から「アメリカ大統領選挙」まで多岐にわたり、興味深いものばかりです。本年度より再度NIE実践校として活動するにあたり、地元で活躍している人物の紹介記事を掲示する活動を始めました。今後は「地域住民の一人として、自分にできることは何か?」など、新聞記事から考えたことを中心に学習を発展させていきたいと考えています。

 情報リテラシー向上 御殿場南高 杉崎知明先生
 この度のNIEの取り組みにより、「読み取り」「要約」「発表」の力を高めるとともに、情報過多、情報多様性が進む中において、デジタル情報との関わり方を含め、情報リテラシーの向上を図りたいと考えています。
 注目した話題や課題を継続的に注視することにより、初期情報の変化や誤り、関係性や多様な価値観への気付きが生じ、それらを通じて考えを深化させ、新たな見解の確立や実践行動につながることになれば良いと思っています。

 活字に触れる機会へ 藤枝東高 深沢拓先生
 昨今の教育現場で、生徒に身に付けさせたい力としてよく挙げられているのは、「思考力・判断力・表現力」や読解力などかと思います。学校の授業に加えて、新聞はこれらの力を育むために本当に良い材料になると思います。しかし、現状では本校においても、新聞を含めた活字に触れる機会が少ない生徒が多くみられるので、生徒のより良い成長の助けとなるように工夫して取り組んでいきたいです。

 2021年度NIE実践指定校
 ■新規 
 河津町立南小、静岡市立中島小、牧之原市立萩間小、浜松市立上島小、静岡大成中、浜松学芸中・高、御殿場南高、藤枝東高
 ■継続
 (2年目)三島市立南中、静岡市立大河内小中、掛川市立桜が丘中、清水特別支援学校
 (3年目)浜松市立城北小、小山町立小山中

 

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■紙面授業 国語 「おもてなし」を心に 御殿場西高 宇津悦子先生

 季節は秋へ移り、周囲の自然も鮮やかに色づき始める頃になりました。今年の夏は、東京五輪・パラリンピックが開催され、自転車競技の会場となった静岡県も盛り上がりを見せました。何よりもアスリートの最後まで諦めない姿に「自分も頑張ろう」と力や勇気がわき上がった人も多いのではないでしょうか。
 その中で、ボランティアの活躍も話題になり、新聞紙面上でも大きく取り上げられました。ボランティアの心を尽くした「おもてなし」の振る舞いがクローズアップされたのです。
 「もてなす」は漢字では「持て成す」で何かを使って物事を成し遂げるという意味です。
 この言葉は平安時代には使われており、源氏物語や徒然草にも登場します。徒然草第32段には、客を見送る家人が、すぐに戸を閉めず後ろ姿を見送る心遣いについて述べられています。何かを使っての何かとは「心」なのですね。互いに敬い大切に思い共に良い時を過ごそうと心を尽くす。これこそが「おもてなし」なのです。五輪パラのボランティアが注目されたのは、そうした心掛けが自然な振る舞いとなったからでしょう。
 心掛けといえば、私が常に心に置く「あとみよそわか」があります。小説家の幸田露伴が娘に伝授した言葉で、父が娘に掃除を教える場面で「もうよいと思っても、後ろを振り返って確認しなさい」としつけます。「あとを見よそわか」の「そわか」は仏教用語で、呪文の後に付ける言葉のようです。それが付いた呪文の言葉は、他人や周囲への気遣いを重んじているともいえるでしょう。
 「おもてなし」や「あとみよそわか」を心に忍ばせてみてください。人とのつながりがいくらかスムーズになるかもしれません。


※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(53)地域の思い伝える新聞

 7月から8月にかけて、全国高校総体「輝け君の汗と涙 北信越総体 2021」が開催されました。
 勤務校ではボクシング競技に出場する選手がいたため、筆者は8月上旬に福井県に引率教員として大会に参加しました。その時滞在した宿舎で、福井県の地方紙を手に取って読む機会があり、コロナ禍の中で2年ぶりの全国高校総体が地元で開催されるということで、出場する地元の高校生や大会関係者に関する記事が多く、折しも東京五輪で活躍する福井県出身の選手も大きな見出しで掲載されていました。
 今回静岡を離れた地で他の地方紙を読んだことは、新聞が地元の人々の思いを丁寧に伝え、大切にしていることを改めて学ぶいい機会となりました。学校の授業の現場では、例えば全国紙と地方紙の1面を比較したり、複数の地方紙を比較することで生活者の多面的な見方や地域のつながりを、より深く考える機会となるのもNIE授業の魅力の一つです。福井から持ち帰った新聞は、地元の静岡新聞と合わせて読んだ時に、筆者にとってこれからの授業づくりのための貴重な教材となりそうです。
 (静岡聖光学院中・高・伊藤大介)