一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=「読まないのはもったいない」 興味、関心の身近な情報源 新聞感想文最優秀 常葉大橘高 増田さん 常葉大常葉高 石橋さん

2022年06月04日(土)付 朝刊


■「読まないのはもったいない」 興味、関心の身近な情報源 新聞感想文最優秀 常葉大橘高 増田さん 常葉大常葉高 石橋さん

 「新聞を読まないのはもったいない」。若者の新聞離れが進む中、高校生2人は顔を見合わせうなずいた。2021年度しずおか新聞感想文コンクールで最優秀賞を受賞した常葉大橘高2年の増田彩月さん=受賞時は同校1年(高校生の部)=と常葉大常葉高1年の石橋茉心(まこ)さん=受賞時は常葉大常葉中3年(中学生の部)=。2人の生活には新聞が身近な存在になっている。

 
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本紙を読む増田彩月さん(左)と石橋茉心さん=5月下旬、静岡市葵区の常葉大常葉高

 

 増田さんが新聞に親しむようになったのは小学2年の時。朝、配達された新聞を玄関から取ってくる役目がきっかけだった。石橋さんは小学生のころから朝食時に新聞をめくる習慣があったという。2人は静岡新聞の日曜別刷り「週刊YOMOっと静岡」などに目を通し、「より多くの知識を知ることができる」と徐々に新聞を読むようになった。
 学校の課題としてではなく、個人的に新聞感想文コンクールに応募した2人。吹奏楽部に所属する増田さんは、米国の水爆実験で被ばくした焼津市のマグロ漁船「第五福竜丸」を題材にした曲「ラッキードラゴン」を昨夏演奏した。乗組員だった大石又七さんの話を聞いた経験もある増田さんは「この事実から目を背けてはいけない」と作文をまとめた。
 石橋さんが作文を書いたきっかけは、当時いじめに関する本を読んでいたことと、たまたま目にした1本の新聞記事だった。過去に行ったいじめが原因で東京五輪の楽曲制作担当だったミュージシャンが辞任した記事を読み、「過去の失敗を反省し、謝罪しても、活躍の場を奪われる社会はおかしい」との違和感を作文につづった。
 コンクールを通して記事に対する「自分の考えを発信することができた」と石橋さん。増田さんは今後大学生になり1人暮らしを始めても新聞を取り続けたいという。2人にとって新聞は興味や関心のきっかけをつくる「価値ある情報源」だ。
 (社会部・天羽桜子)

 
 「しずおか新聞感想文コンクール」作品募る
 静岡新聞社は「しずおか新聞感想文コンクール」の作品を募集している。読解力や思考力、表現力を養い、地域への関心を高めることが狙い。対象は県内の小学4年生以上で、募集は小学生、中学生、高校生の3部門。2022年1月1日から8月31日までの新聞記事を読んだ感想を送る。締め切りは9月5日必着。詳細は静岡新聞社読者部内、同コンクール事務局<電054(284)8984>へ。

 

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■紙面授業 生物 安全性担う実験動物 浜松日体中・高 山本基枝先生

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、治療薬やワクチンの開発が行われています。国産のワクチンについても、最終段階の治験が進み、開発が大詰めとなっていることが新聞紙面で大きく扱われました。新型コロナの治療薬をはじめ、安全な医薬品を開発するためには、実験動物による臨床試験が不可欠です。
 過去に薬害として問題となったサリドマイドは睡眠薬として開発され、妊娠初期に服用した女性から奇形児が生まれて社会問題となりました。この薬を服用させたマウスやラットでは胎児に奇形が見られませんでしたが、ウサギではヒトと同様な奇形が発症しました。これを機に、幅広い動物種を用いて安全評価を行うことの必要性が明らかになりました。現在、サリドマイドは多発性骨髄腫などの治療薬として用いられています。
 実験動物として一般的なマウスやラットはネズミの仲間ですが、スンクス(ジャコウネズミ)はモグラの仲間に分類されます。モグラの仲間は進化・系統の視点から、ネズミに比べて、よりヒトに近い存在と考えられています。
 2002年、沖縄県でスンクスのアルビノ(白毛赤眼)が捕獲されました。マウスやラットで最も一般的なアルビノは、メラニン合成に関与する酵素遺伝子の変異に起因しています。しかし、スンクスではメラニン色素の運搬に関わるタンパク質を合成する遺伝子に変異が見つかりました。この遺伝子変異によって生じるアルビノは、ヒトでも近年発見されています。
 このように、臨床的に同様の症状を示す場合でも、原因遺伝子が同じとは限りません。さまざまな特性をもった実験動物を用いて、病気の実態を把握したり、医薬品の有効性や安全性を評価したりすることで安全安心な医薬品開発を行うことができるのです。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(60)家庭科と新聞でSDGs(中村都/静岡麻機小)

 小学生でSDGs(持続可能な開発目標)を学ぶのは難しいと思われがちですが、そんなことはありません。
 家庭科は、衣食住における生活の知恵を習得する教科だと捉えられていますが、実際にはSDGsの考え方そのものを学んでいる教科なのです。例えば「食」は、目標12「つくる責任 つかう責任」につながります。
 「持続可能な社会を生きる」(6年)の単元で、新聞を使ったSDGsの授業を行いました。話題が給食の残飯から食品ロスに発展したところでいったん教科書から離れ、新聞記事から他の地球の問題を探すことにしました。
 全都道府県から取り寄せた地方紙の見出しに注目していくと、地域限定の問題に直面することがありました。海底火山噴火の影響で、膨大な量の軽石が海岸に漂着して漁業ができなくなった沖縄の漁師の嘆きが、目標14「海の豊かさを守ろう」に結びついたのです。
 家庭科を窓口にして新聞で間口を広げていけば、子どもたちなりに継続して考えていくことができる身近な問題にたどり着けるはずです。