一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=新規実践6校が抱負

2022年08月06日(土)付 朝刊


■新規実践6校が抱負

 日本新聞協会は2022年度のNIE実践指定校を全国で534校決定した。県内では新規6校、継続8校が決まり、指定の2年間のうちの一定期間、県内で発行される7紙が提供され活用される。新規6校に抱負を寄せてもらった。

 <2022年度NIE実践指定校>
 【新規】伊豆土肥小中一貫校、富士見中、静岡清水飯田中、藤枝広幡中、浜松春野中、静岡北特別支援学校南の丘分校
 【2年目】河津南小、静岡中島小、牧之原萩間小、浜松上島小、静岡大成中、浜松学芸中・高、御殿場南高、藤枝東高

 

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NIE活動の抱負を語る22年度新規実践校の教員ら=6月、静岡市

 

 伊豆土肥小中一貫校 増田弦己教諭 文章を正しく理解、表現
 本校の子どもは、文章を正確に理解したり、自分の言葉で正しく表現したり、筋道立てて考えることが苦手です。今回NIEの指定を受け次のことを全校で取り組んでいきます。
 まず、新聞の視写です。視写を通じて、集中力を磨き、文章を書くスピードが向上することを期待します。また、書くことで言葉やその意味を覚え、文書構成力が身に付いていきます。次に、新聞記事を基とした条件作文です。新聞記事を読み、分かったことを一段落目に、自分で考えたことを二段落目に書いていきます。新聞記事を正しく読み取ったり、記事の要点を捉えたりする力の向上を目指します。
 その他、新聞クイズ(フェイクニュースを見破れ!)や新聞の内容を自分でアレンジした4コマ漫画作りなど、子どもの発達段階に応じて、楽しみながら取り組んでいける活動を行っていきます。

 静岡清水飯田中 八木圭一教諭 正確に読み取る力育む
 調べ学習の課題が出されると、生徒は「インターネットを使って調べていいですか」と尋ねてきます。現在、一人一台のパソコンが用意されている学校現場では当たり前の様子です。とても忙しい毎日を過ごす生徒には、検索エンジンに調べたいキーワードを入れるだけで膨大な情報を手に入れることができるインターネットは非常に便利なツールです。
 しかし、それ故に、その情報が本当に正確なのか、公正なのかを判断するメディア・リテラシーを身に付けることが求められていると感じています。
 NIEの活動を通して、「必要な情報(記事)を選択し、正確に読み取り、内容を要約する」を繰り返すことで、その力を身に付けさせたいと考えています。そこから、記事について自分の考えをもち、他者に伝え合う生徒が増えることを期待します。

 浜松春野中 武井千幸教諭 伝える相手意識し発信
 「GIGAスクール構想」の下、浜松市では現在、生徒一人一人にタブレット端末が貸与されています。生徒は、それを用いて「なぜ?」「どうして?」といった疑問を授業中や休み時間に調べ、解決することができる学習環境にあります。
 そんな恵まれた環境の中で、本校では「情報を分析し、それを的確に表現する力の育成」という観点でNIE教育を進めていきます。地域、県内、国内、はたまた世界で起こっている出来事について、「新聞」から情報を収集、分析し、それらを更に深化させるために端末も有効的に活用していきます。
 また、得た情報を整理してアウトプットするために、ポスターにまとめたり、新聞にまとめたりする活動を通して、伝える相手を意識した情報発信ができるようにしていきたいと考えています。

 富士見中 渡辺貴之教諭 6年間で活用力高める
 本校は中学校と高等学校が接続する私立学校です。新規実践校として、中学部に関わる教員が、各教科で工夫しアイデアを出し合い、この機会を生かしていきたいと考えています。
 中・高6年間、NIEを継続して取り組むことで、新たな学力の3観点である「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に学習に取り組む態度」の育成につながる次の三つの新聞活用力を身に付けさせたいと思います。①長文を読解し要約する力②根拠を持って自分の意見を表現する力③幅広い分野の情報に興味・関心を持ち、主体的に学習を発展させていく力です。
 新聞活用力を高めることで、子どもの学力に関する課題解決への糸口になると期待し、楽しみながら実践を進めていきたいと思います。

 藤枝広幡中石橋直明教諭 情報リテラシーを向上
 予想の難しい、変化の激しい世の中にあって、生徒たちは、ネット、SNS、テレビ、新聞など多様なメディアからさまざまな情報に囲まれて生活しています。
 そのような生徒たちが、さまざまな事象への関心を広げ、課題を追求し、解決していく探究的な学びを実現するために、新聞を学習や日常の中で楽しく、上手に活用するNIEを目指します。
 NIEの実践により、生徒たちが文章の意味を正確に理解する読解力を高め、自分の考えを持ち、言葉や文章で表現できるようにしていきたいと思っています。そして、生徒の「情報リテラシー」と「情報活用能力」の向上につなげていきます。
 生徒の学びがより充実し、一人一人のより良いキャリア形成に生かされることを願っています。

 静岡北特別支援学校南の丘分校 鈴木雅義教諭 共生共育の実現が目標
 本校は、駿河総合高等学校と併置の特別支援学校高等部の分校です。共生共育の実現と働くために必要な力を身に付けることを目標に掲げています。卒業後は社会人として会社で働き活躍するため、社会のことを知る必要があります。新聞を教材として活用することは、卒業後の生活を豊かにするものであると考えています。
 そのため、以下三つの目標を立て取り組むこととしました。①生徒が「新聞を見ること」「開くこと」「読むこと」に慣れることのできる環境を整備する②生徒が生活の中で新聞を読む習慣を身に付け、興味や関心を広げ、膨大な記事から必要な情報を取捨選択し活用することを目指す③社会の出来事へ関心を高め、自分の言葉で話すことができる素養を育てる。
 これらの目標を達成できるよう、生徒と教員が一緒に楽しく、優しく新聞と関わることができればと考えています。

 

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■紙面授業 地歴公民 知識の連続性楽しむ 常葉大菊川中・高 三宅秀幸先生

 観測史上最速の梅雨明けとなった今年。その発表は新聞紙面でも大きく取り上げられました。毎年のような猛暑が続く中、私が思いをはせるのは、動物園・水族館のアイドル、ペンギンたちです。
 日本でよく目にするのは「フンボルトペンギン」という種類です。日本に千羽以上いると言われる、おなじみのペンギンです。南米チリ沿岸、南緯20度前後のサボテンの荒野に生息し、北緯34度前後の静岡でも生活は可能というわけです。ところがこのフンボルトペンギン、野生は絶滅危惧2類に属する希少なペンギンです。日本は、そのほかにもたくさんの種類を目にすることができる「ペンギン王国」。なぜこれほどまでにペンギンが飼育されているのでしょう。
 きっかけの一つは、遠洋漁業です。戦後食料不足に苦しむ中、南洋捕鯨を中心に数多くの漁船が南太平洋へと出かけていきました。好奇心旺盛なペンギンたちは、漁船に飛び乗り、漁師たちはかわいさのあまり連れて帰ってきたそうです。
 こうした中で起きた悲劇が第五福竜丸事件(1954年)です。焼津港を出港した船は、米国によるビキニ環礁での水爆実験に巻き込まれ、船員は被ばくし、水揚げされたマグロは原子マグロなどと呼ばれ廃棄されました。この事件に着想を得て、半年後に誕生したのが「ゴジラ」です。多くの日本人はゴジラの姿に、いまだ残る戦争の影を重ね合わせたのではないでしょうか。
 さて、今日は「ペンギン」に始まり「ゴジラ」にたどり着きました。一見無関係な二者が結びつくように、知識は断片的なものでなく、連続性のあるものです。皆さんの「好き」が広がり、「世界」が広がっていく、そんなイメージで学んでみては。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(62)新聞記事と現実つなぐ(小川訓靖/静岡清水三保第二小)

 5年生理科、「台風と防災」の学習で、新聞記事をきっかけに授業を始めた。「あす台風4号九州に上陸か」という見出しの記事を授業の始めに配付し、まずは各自で読む時間を設けた。
 記事を読む際に子どもたちに伝えることはたった二つ。
 一つ目は、大体をつかむということ。「大人でも読めない漢字や、意味の分からない言葉はたくさんあるよ。完璧に読もうとしないで、分からないところはとばし、分かるところを読んで、大体をつかもう」。二つ目は、「なるほど!」に線を引いて読もうということ。「驚いたことや、初めて知ったことには、線を引きながら読んでいこう」。そのような言葉がけをします。子どもたちは、赤ペンなどを片手に、線を引きながら読み進めていきます。
 「どんなことが分かった?」。クラス全体で、大体の内容を共有した上で、学校から5分の海岸へ...。「波がいつもより高い」「海の色が濁っている」「雲が厚い」「海岸がけずられているのは前の台風の影響?」...。
 一つの記事から知った事実が目の前の景色とつながっていく瞬間です。
 九州上陸前の東シナ海にある台風の影響が、遠く離れた駿河湾にもう出始めていることを子どもたちは実感し、教室に戻りました。