一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=クイズ形式で新聞活用 学びを深める教材に 牧之原・萩間小

2022年10月01日(土)付 朝刊


■クイズ形式で新聞活用 学びを深める教材に 牧之原・萩間小

 NIE実践指定校の牧之原市立萩間小の6年生が、新聞を活用したクイズ形式のユニークな授業に取り組んだ。新聞に親しみ、情報を取得する力や表現力を養い、今後の自主学習につなげていくことが狙いだ。
 9月下旬、床一面に並べられた子ども新聞を1㌻ずつ丁寧に読み込む児童の姿があった。「安倍元首相がどうして表紙になっているんだろう」「このページに答えが載ってるのかな」-。児童は2人一組のチームを組み、他のチームが出題したクイズのヒントを紙面から探し出した。答えを見つけた児童は、解答用紙に記入した。

 

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新聞を読みクイズの答えを探す児童=9月下旬、牧之原市の萩間小

 

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クイズの答えを解答用紙に記入する児童

 

 授業を担当したのは同校NIE担当の絹村雅昭教諭。文章や図表から必要な情報を導き出す力を養う教材として、新聞の有効性を見いだした。クイズというゲーム性を持たせることで児童自身に情報を必要とする状況を意図的に生み出し、新聞に対して「面白い」「有益だ」という気持ちを芽生えさせようと考えた。
 「ウクライナの輸出で盛んなものは何」「喪章の意味は」など、今回の授業で出題されたクイズは全て児童自身が考案。問題を作るという目的意識を持つことで、文章の理解力向上にもつなげたい考えだ。授業に取り組んだ長野咲空さん(12)は「細かな部分にまで目を通して、新聞にはたくさんの情報が詳しく書いてあるのだと知ることができた」と笑顔で話した。
 国のGIGA(ギガ)スクール構想に伴い、教育現場は近年急速にデジタル化が進む。絹村教諭は「新聞のような保存性のある媒体に触れてこそデジタル媒体から得る情報の長所、短所が分かる。こうした側面からも児童の学びに生かしていけたら」と語った。
 (榛原支局・足立健太郎)

 
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■紙面授業 地理歴史 受験の始まり「科挙」 富士見中・高 植村一海先生

 秋も深くなるこの時期、高校3年生の皆さんは、受験勉強に打ち込んでいることと思います。大学入学共通テストの導入に際しては、記述式問題、英語の民間試験の導入が見送りになるなど、受験生にとって重要な変更があり、新聞紙面でも大きく取り上げられました。ところで、この「受験」の風景は、一体いつからあったのでしょう。
 千年以上も前、中国に隋という王朝があったときには既に存在していました。

 「昔日 齷齪[あくせく]として 誇るに足らず/今朝 放蕩[ほうとう]として 思い涯[はて]なし/春風 意を得て 馬蹄[てい]疾[はや]く/一日に看[み]尽くす 長安の花」(一海知義「漢詩一日一首春」)
 この漢詩は「登科の後」という題で、孟郊という詩人が46歳まで何度も挑戦した試験に合格した際の、晴れ晴れとした気持ちを素直に詠んだものです。
 彼が挑んだ試験は、中国の国家公務員登用試験「科挙」です。
 隋以降の中国では、より優秀で「君子」の資質をもつ官僚を選出するため、候補者へさまざまな学科試験を実施しました。合格率も異様なまでに低く、受験生全体の0・03%しか合格できない年もありました。しかし、この試験に合格さえすれば、その人物の将来は保証されたのです。

 彼らの受験勉強は、3歳頃、初めて文字が書けた瞬間から始まります。現在の小学生程度の年齢になれば、受験専門の塾に通って、「君子」になるための猛勉強をしたのです。その競争に次ぐ競争を突破した瞬間は、人生をかけた努力が実った瞬間そのものです。紹介した詩のように、世界全てが美しく見えるほどのすがすがしさを味わったことでしょう。
 多くの若者たちが、大きな夢を描いて青春を費やし、ごく一握りだけがその夢をかなえる。熾烈[しれつ]な受験の始まりは、こんなところにあったのです。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(64)思考力対策に読み比べ(実石克巳/静岡高)

 夏休みも終わり、3年生はそろそろ受験モードに突入する時期であろう。共通テストが複数資料を比較・検討し、思考力を問う出題に移行している現在、古典的なNIEの手法である「新聞読み比べ」が再び脚光を浴びる時が来た。小論文対策でも該当するので、先行報告書を精読されたい。
 とにかく、新聞を読む習慣付けから始めよう。筆者の現任校では、どうしているか。生徒が記事を切り抜き、コメント執筆・教員の意見記入&調査内容の指示という方法だ。出勤すると、約30冊のノートが机上に山積みされている光景が目に入る。添削後に帰りのショートホームルームで返却すると、誰が指導を受けているのかが自然に分かるのだ。友人同士でお互いに批評し合い、文章と発話によるインプットとアウトプットの相乗効果を狙わなければならない。
 生徒同士は意外に情報交換をしないので、あらゆる機会を捉えて、自然に話し合える状況を醸成する必要があるだろう。これがいわゆる「受験は団体戦」と称される体制であり、集団で取り組むところにNIEの教育効果も表れるに違いないのである。
 (静岡高・実石克巳)