一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載= HRで手軽にワークシート 読解力や発信力を養う 富士宮・井之頭中

2022年11月05日(土)付 朝刊


■HRで手軽にワークシート 読解力や発信力を養う 富士宮・井之頭中

 富士宮市立井之頭中は、新聞記事の狙いや記事から読み取れることを問題形式にした「新聞ワークシート」活動に力を入れている。好きな本をプレゼンする「ビブリオバトル」の活動と合わせて文章の読解力や発信力を養っている。
 「次は誰に答えてもらおうか」「記事を読んで、防災訓練での心構えは何か答えて」という教員の呼びかけに、「中学生は助けられるだけでなく助ける立場にあるという心構えです」と発表する生徒。10月上旬、2年生が9月に行われた総合防災訓練に関する本紙記事を題材にしたワークシートに取り組んだ。
 使用するのは、静岡新聞のNIEサイトから入手できるワークシート。毎月2回、全教室で帰りのホームルーム(HR)を使い、教職員が見守る中、設問に答え、クラス全員で答えの確認をする。

 

nie_221105.jpg

 
 加藤春羽さん(2年)は「文章を要約する力がついてきた」と手応えを感じている。山崎草生さん(2年)は「文章を理解して自分の考えをまとめる力になっている」とし、新聞の印象を「難しいイメージがあったけど身近な内容も多い」と話した。
 同校は、読解力やプレゼン力を高めるため、校内の配架図書から本を選んで紹介し合い、どの本が一番読みたくなったかを投票するビブリオバトル活動を続けてきた。本年度はさらに国語力の向上を目指し、NIE活動を加えた。2年生担任で国語科の尾島良輔教諭はワークシートの良さを手軽にできることとし、「新聞と読書によって語彙(ごい)力や文章を読み取る力が伸びている。ワークシートで扱う新聞記事を通じて、生徒が社会を知るきっかけにもなっている」と成果を語る。
 全校生徒17人の小規模校。山崎匡史校長は、意見をまとめ発信する力をつけることで「高校進学前に誰とでもコミュニケーションが取れるようになってほしい」と相乗効果に期待した。
 (富士宮支局・吉田史弥)

 
               ◇........................◇

 
■紙面授業 理科 海洋プラごみ 自分事に 飛龍高・広瀬智子先生

 2016年にスイスで開催されたダボス会議で、世界では年間800万トンのプラスチックごみが海に流出しており、50年にはこれらの重量が地球上に生存する魚の重量を超えてしまうとの試算が発表され、新聞でも大きく報じられました。
 中でも、5ミリ以下のマイクロプラスチックが生態系に及ぼす影響が懸念されています。海洋生物が誤飲してしまうと、炎症反応や摂食障害を起こす危険性が報告されています。

 マイクロプラスチックは世界各地の海岸に漂着し、日本各地の海岸でもプラスチックごみを観察することができます。沼津市にある飛龍高校では昨年度から、授業の一環として自然と環境をテーマに千本浜海岸と島郷海水浴場でマイクロプラスチックの現地調査を行っています。どちらの海岸でも多くの海洋ごみを観察できましたが、特に島郷海水浴場では、砂浜に色とりどりのマイクロプラスチックがあることを確認することができました。

 実は海岸に漂着したプラスチックごみは、海外のものだけではなく国内のものも含まれています。日本で製造・廃棄されたものも世界の海岸に流れ着いていることを私たちは忘れてはいけません。SDGs(持続可能な開発目標)にも海の保全は掲げられており、世界各地でごみの削減に向けての取り組みがなされています。私たちの生活も脱プラスチックが習慣化してきましたが、一人一人の小さな取り組みが、多くの生き物の命を支えているのです。
 本校が取り組んでいる現地調査が、現状の把握にとどまることなく、「生徒がこの環境問題を自分のこととして捉え何ができるか」を考える契機となり、30年後には私たちの取り組みが成果として結実することを期待していきたいと思います。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
               ◇........................◇

 

■NIEアドバイザーのワンポイント講座(65) 政治を多角的に考える(伊藤大介/静岡聖光学院中・高)

 高校生と教育現場で関わっていく中で近年大きな話題になっていることは、選挙権と成人年齢引き下げの問題です。18歳という年齢を基準にした大人としての考え方をどのように生徒が学んでいくのか。筆者が最近取り組んだ例の一つに、時事問題の新聞の読み比べがあります。
 用意したのは全国紙2紙と地方紙1紙の合計3紙。いずれも安倍晋三元首相の国葬に関する1面の記事で、生徒たちは関心の高さから丁寧に文章を読み込んでいました。それぞれの見出しや記事内容の違いを発表する場面では、国葬の内容を元首相の功績を踏まえて記述している記事や国葬への賛否を強調している記事、国葬の前の状況から国葬の内容を含めた事実を丁寧に伝えている記事といった各新聞社の特徴を、客観的な視点で捉えている生徒の発言が多かったです。
 政治の話題を複数の新聞記事を使うことでさらに多角的に考えさせていくこと。こうした地道な取り組みの繰り返しが、若年層で投票率が伸び悩む原因の一つである大人たちの魅力のない政治を、自ら主体的な意識や行動で変えていくきっかけになるのではないでしょうか。
 大人の一人として魅力ある政治を、新聞を活用しながら伝えていければと思います。