一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=英字記事 世界を身近に 作文や読解力の向上期待 静岡大成中 公開授業

2022年12月03日(土)付 朝刊


■英字記事 世界を身近に 作文や読解力の向上期待 静岡大成中 公開授業

 NIE実践指定校の静岡大成中(静岡市葵区)で10月に行われた英語と理科の公開授業。このうち英語の授業は、日本語訳が併記された英字記事を使って行われた。同校としては初の取り組み。記事に対する生徒の意見も発表された授業に、参観した教員らは「新聞に親しみを持ってもらうための参考になる」「異文化理解にもつながる」などと熱心にメモを取った。

 
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記事に対する意見を発表する生徒=静岡市葵区の静岡大成中

 
 授業は3年生約20人を対象に行われた。事前の授業で、生徒には「パキスタン豪雨で大洪水」「米大統領、銃規制強化訴え」など、世界のニュースを伝える複数の英字記事が提示され、その中から一つ選択。生徒は二人一組で「パキスタンの国土面積はどのぐらいあるか」「アメリカの銃規制の現状はどうなっているか」など、疑問に浮かんだことをタブレット端末で調べたり、外国語指導助手(ALT)に質問したりした。

 

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タブレット端末で英字記事を読み込む生徒

 
 一通り調べた後は、記事に関心を持った理由や、ニュースに対する意見などをまとめ、英作文に挑戦した。「エリザベス女王国葬」を選択したペアは授業で既に習っていた英単語を用い、「みんなに愛されたエリザベス女王が亡くなってびっくりした」などと発表した。
 公開授業後、意見交換の場が設けられ、参観した教員から「なぜ、日本語訳付きの記事にしたのか」などの質問があった。担当した吉永光希教諭(49)は「英作文を重視した。生徒が興味を持ち、意見を言いやすい記事を選んだ」と意図を説明した。
 同校はほとんどの生徒が卒業時には英検3級を取得しているなど、英語教育に力を入れている。吉永教諭は「時事英語に親しむことで、ニュースに関心を持つきっかけになる」と記事活用の意義を話し、「一生懸命、自分の意見を長い文章で書こうとする姿勢を見て、生徒の成長を実感した。より長文の英字記事にも触れさせ、読解力を伸ばしていきたい」と述べた。
 (社会部・島田莉菜)

 
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■紙面授業 社会 君主制、民主主義の共存 静清高 加藤匠吾先生

 9月8日に英国女王エリザベス2世が崩御なされました。日本時間で言えば9月9日のことですが、私はまずスマートフォンに入るニュースで知り、翌日の静岡新聞に掲載された記事を見て改めて実感しました。

 新聞の紙面を読むと、チャールズ皇太子が王位を継ぎ、新国王となられました。その後、さまざまなメディアを見ると、「チャールズ3世」と呼ばれるようになっていました。
 チャールズ3世ということは、1世、2世の同名の国王がいたことが想像できると思います。改めて山川出版の「詳説世界史」をひもといてみると、チャールズ1世とチャールズ2世の記述があります。チャールズ1世は、父ジェームズ1世と同じく、王権神授説(王の権利は神から授かったもの)を唱え、専制政治を行いました。議会はそれに反発し、1628年に権利の請願を可決しました。チャールズ1世は議会を解散し、以後11年間、議会を閉ざしたのです。やがて議会が再開すると、1649年、ピューリタンのクロムウェルが議会で力をつけて、チャールズ1世は処刑されてしまいました。

 チャールズ2世は、クロムウェルが亡くなるとイングランドに戻ってきて国王に即位しました(王政復古)。当初チャールズ2世は、議会を尊重すると約束しましたが、やがて専制的な姿勢をとってカトリックの擁護を試みて議会と対立しました。
 両チャールズは、議会と対立したことで民主主義の歴史の観点からみると、良い君主とは言えません。現チャールズ3世は、どんな国王になるでしょうか、見守ることにしましょう。また日本も君主制と民主主義が共存する国です。君主制と民主主義の共存ができる理由を歴史から学ぶのもよいかもしれません。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(66)紙とデジタルの使い分け(中村都/静岡麻機小)


 小中学校への学習用端末の配備で、インターネットによる調べ学習が簡単にできるようになりました。うまく使えば大きな味方となる半面、安易に検索に走って答えを導き出すことが、考える力を低下させる原因になるのではないかと懸念しています。
 アナログ時代に育った私の調べ学習は、たくさんの蔵書や新聞、資料などの紙媒体に目を通すところから始まりました。当然自分の疑問にズバリ答えてくれるものなどあるわけがなく、「どうやったら答えにたどり着くのだろう」と試行錯誤することこそが、考えることだと捉えていました。
 ウエブサービスやスマートフォンの普及で人が接する情報は膨大な量になりました。その中から自分の必要としているものをストレスなく短時間に入手する必要に迫られる現代人は、考える暇がないのかもしれません。
 紙媒体は線を引いたり書き込みをしたりすることができます。手を使って得た情報は頭の中でしっかりと整理・記憶され、それが考えるための素材になっていきます。デジタル機器と紙媒体との使い分けが、今後の課題ですね。