一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1土曜掲載=読んだ記事数で「合戦」 テーマ決めクラス対抗 社会知る機会に 御殿場南高

2023年02月04日(土)付 朝刊


■読んだ記事数で「合戦」 テーマ決めクラス対抗 社会知る機会に 御殿場南高

 NIE実践指定校の御殿場南高(御殿場市新橋)は昨年、1年生が毎週所定のテーマに関連した新聞記事を読んだ数を競う「新聞合戦」に取り組んだ。教室に配布される新聞を活用しようと生徒が発案し、必ず文章に目を通すルールも設けた。社会の動向や課題を理解するきっかけになっているという。

 

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テーマに関連した新聞記事を探し、見つけた数を競った新聞トーク=2022年11月、御殿場市新橋の御殿場南高

 

 休み時間や放課後、昇降口に掲示された模造紙に生徒が次々と新聞記事を貼り付ける。防災をテーマにした初回は、県内を襲った台風15号の被害を伝える記事や行政対応の検証記事が並んだ。
 新聞合戦は4クラスの対抗戦。毎週各クラス5人が教室にある新聞を切り抜いたり、インターネット上の記事を印刷したりして貼り付け、その数に応じてポイントが付与される。10~12月の7週間の合計ポイントで順位を決めた。

 

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新聞記事が貼られた模造紙

 

 各クラスの代表者が集う会議でシステムを決めた。メンバーの杉山未都さん(16)は「クラス対抗にすれば楽しみながら取り組める」と話す。担当の芹沢光教諭(45)は「毎週びっしり貼ってくれる。予想以上に意欲的」と目を細める。
 記事の要点に線を引いてから貼るのがルール。「しっかり読み、内容を理解してもらう」ためだ。普段はテレビニュースで情報を得ているという池谷桃歌さん(16)は「たくさんの記事からほしい情報を選べる」と多分野の情報を網羅する新聞の利点に気付いた。

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新聞合戦で優勝したクラス

 

 11月には生徒が一堂に会した特別版「新聞トーク」を行った。床に並ぶ新聞から「責任」などのテーマに関連する記事を探した。生徒の一人は政治家の不祥事を伝える記事を見つけ「責任感がない」と鋭く指摘した。
 御殿場南高はキャリア教育「Cプロジェクト」に力を入れる。新聞合戦は1年生の課題「社会を知る」に合致する。芹沢教諭は「社会事象に関心を持ち、読解力を身に付ける機会になっている」と手応えを語る。
 (御殿場支局・矢嶋宏行)

 
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■紙面授業 理科 考えたい原発の安全性 東海大静岡翔洋中 込山典寿先生

 昨年2月に始まったロシア軍によるウクライナ軍事侵攻は、連日大きく報道されてきました。3月5日の新聞は、ロシア軍がウクライナ南部のサポロジエ原発を攻撃しているという見出しであふれていました。
 私は子どもの頃、1986年にチェルノブイリ原発事故のニュースを見て初めて放射線の恐ろしさを学びました。2011年の福島第一原発事故の際は、教員としてニュースを見て、放射線がもれ続けている恐ろしさを再確認しました。

 そして、先日、中学2年生の理科の時間に、誘導コイルの実験で放射線が出る危険性を生徒らに説明する機会がありました。誘導コイルとクルックス管を用いた真空放電での被ばく量は無視できないことを注意喚起しながら実験を進めました。私たちは適切な距離を保ち、注意深く実験を行いましたが、この実験の安全に関するガイドラインはいまだに曖昧です。
 残念ながら、人類は原発を稼働し始めた1954年から2011年の約60年間に2カ所で起きた事故により、現在の技術では返済できない大きな負債を抱えてしまいました。
 放射性物質の中には、半減期が万年~100万年単位のものもあります。日本がユーラシア大陸から離れて1万年くらいしかたっていないことから、もう1万年後の日本が現在と全く違う地図の形になっていることは簡単に想像できます。しかしながら、それでも放射線量にはほとんど変わりはありません。

 科学的に考えて、このまま原発を人類が使用するのなら、2011年から60年後の71年までの追加事故件数は2件と予想されます。
 中学生は比例のグラフを学び、実験していないデータを予測することが得意ですが、原発事故においては、ぜひとも反比例のグラフに事故件数が収束されていくことを願います。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(67)大学情報収集のヒント(吉川契子/静岡城北高)

 進学希望の高校生が進学先を選ぶ際、教科の得手不得手や模擬試験の成績を基にするだけでなく、新聞情報の中にヒントを探してみましょう。
 大学で行われている難解な研究が、高校生でも分かる平易な文章で適切な写真や図とともに紹介されています。例えば静岡新聞の記事を読み込むと、熱海土石流災害やリニア中央新幹線、サクラエビ漁の抱える課題等について、さまざまな大学研究者に取材して情報提供しています。これらの課題に限って見ても、大学研究の多様性を発見することができます。
 コラムや、ニュースを深く掘り下げて考察した提言、地域の課題解決に向けての新たな視点など大学教授らの寄稿が掲載されることがあります。それらをヒントに高校生に話し合いをさせると別のユニークな発想が出る場合もあります。
 他に、新大学の開学予定、大学の新学部・学科の増設・学科再編などの情報の他、大学間の協力体制などの情報も提供されています。大学生が、地域に飛び出して、商店街とのコラボレーションによる商品開発などユニークな活動を展開している例もあります。
 新聞記事は大学研究に非常に役立ちます。最初は教師がピックアップして例を示し、生徒にも類似の記事を探すように促してみましょう。