一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=身近な記事から読解力養う 週1回 昼休み後にワークシート 焼津・港小

2023年07月02日(日)付 朝刊


■身近な記事から読解力養う 週1回 昼休み後にワークシート 焼津・港小
 焼津市立港小は新聞記事の狙いや記事から読み取れることを問題形式にした「新聞ワークシート」を使った活動を始めた。2年生以上の児童を対象に週1回お昼休み後の10分間を使って、設問に答えていく。身の回りの出来事に興味を持つこととともに、文章を読み解く力を養うことに役立てている。
 
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新聞ワークシートに取り組む児童=6月上旬、焼津市立港小(画像の一部を加工しています)
 
 6月の午後、6年生の教室で担任教諭が児童たちに静岡新聞のホームページから入手したワークシートを配布した。題材は2021年6月のヒツジの毛刈り体験を伝える記事。児童たちは時間内で記事を読み込み、見出しや感想についての設問を解き、鉛筆を走らせた。最後に教諭が「なぜ毛刈りをするのか」といった記事の背景について解説した。
 この日でワークシート授業は3回目。冨田竜誠さん(11)は「文章を読んで、考える力が身に付いた」と感想を述べた。特に自分で見出しを付ける作業が楽しいようだ。
 「最初は難しかったけど、だんだん慣れてきて今は楽しい」と語るのは松井花恋さん(12)。ワークシートに取り組み始めてから、自宅で新聞を読む習慣も付いたという。
 ワークシートを取り入れたのは大型連休明けから。ここ数年の全国学力テストで、出題文そのものの文章量が多いことなどから、同校は本年度から読解力を養うことに力を入れる方針を決定。適している教材として「新聞ワークシート」を選んだ。
 使い方は全問解かせる場合もあれば、一問だけ集中して答えさせるケースもあったりと各クラスに任せている。望月剛主幹教諭(45)は「文章を読んだり、見出しを付けたりする作業を通じて、面白がって参加してほしい。新聞にも興味を持ってくれたら」と狙いを語る。
 (焼津支局・福田雄一)
 
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担任教諭(左)の解説を聞く児童たち

 

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■紙面授業 商業 地域に出て探究学習を 浜松啓陽高 木俣貴仁先生

 浜松にゆかりのある人物が、大河ドラマで描かれたのは、井伊直虎、田畑政治、そして、現在の「どうする家康」の徳川家康です。その経済波及効果は大きく、直虎の放映時は、静岡県で248億円、浜松市では207億円もあったということです。
 今年の「浜松まつり」の騎馬武者行列には、たくさんの人出があり、新聞でも大きく取り上げられました。新型コロナウイルス感染拡大以前のにぎわいが回復していることも感じさせます。長い規制、自粛でたまったエネルギーが、新たなビジネスチャンスの創出を後押しできるかもしれません。ここ浜松近辺には、豊かな自然、文化、歴史、ドラマ関連の名所・旧跡の他、「ものづくりの街」ならではの新技術や新商品など、魅力的な地域資源がたくさんあります。
 その実現に、児童生徒の新しい「学び」の形が一役買いたいものです。今、学校では「探究」を重視した学習活動が進んでいます。解決したい課題を設定し、その答えを出すために情報を集めて整理・分析し、その結果から答えをまとめて表現する活動です。
 これからは積極的に「地域」に出て、活発に体験活動をする中で、その「探究」学習を展開してほしいと思います。そして、地域社会の担い手となって、家康に沸いた後でも、地域を創成して盛り上げる一人となってほしいものです。それができた時には、「経済波及効果」に加え、「学びの波及効果」という表現も生まれるかもしれません。
 毎回、ドラマは「どうする」という言葉で結ばれますが、まさに「探究」は、天下人家康の真骨頂です。ドラマを楽しみにしながら令和の児童生徒の皆さんも、「どうする?」ということを大切にして、それぞれの学びを深めていけたら良いと思っています。
※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(72)難解用語 知って親しみ (吉川契子教諭/静岡城北高)

 太陽表面では、突然明るさを増す「フレア」という現象が発生することがあります。この現象がわれわれの日常生活とどのように関係があるのか。4月4日付本紙「太陽フレアが生命の鍵?」は、その疑問に答えてくれます。
 記事では、太陽フレアによる被害の実例が解説されています。
 1989年にはカナダで大規模停電が発生。2000年には日本の人工衛星にも障害が発生しました。17年には衛星利用測位システム(GPS)に誤差が生じました。生活を支える電気が途絶え、GPSの精度が低下する場合があることを知った生徒たちは驚くことでしょう。
 さらに、太陽フレアにより温室効果ガスが生成され、地球生命誕生のきっかけになった可能性があるとする米航空宇宙局(NASA)の研究成果が紹介されています。フレアがなければ、地球上の生命が誕生しなかったとは、何とも興味深いことです。
 授業で扱う言葉は難解で、実生活と関係なく、親しみにくい印象を与えることがあります。しかし、生徒たちに、それらが日常生活と関連があることを理解させると、親しみを感じ、学ぶ意欲を持ちます。新聞には、学びを助ける記事が掲載されます。貴重な記事を見落とさないよう気を付けたいものです。