一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=「対面」再開 活動充実へ意欲 新規実践校抱負

2023年08月06日(日)付 朝刊


■「対面」再開 活動充実へ意欲 新規実践校抱負

 日本新聞協会はこのほど、2023年度のNIE実践指定校を全国で530校決定した。県内は、新規8校と昨年度からの継続6校の計14校。学校現場では、新型コロナウイルス対策の規制も緩和され、対面で多様なNIE活動が本格化する。ICTと連動した学びも期待される中、新規校に活動への抱負を寄せてもらった。

 2023年度 NIE実践指定校 
 <新規>熱海市立泉小、静岡市立由比小、袋井市立袋井南小、浜松市立初生小、静岡サレジオ中、浜松開誠館中・高、磐田北高、浜名高
 <継続>伊豆市立土肥小中一貫校、富士見中、静岡市立清水飯田中、藤枝市立広幡中、浜松市立春野中、静岡北特別支援学校南の丘分校

 熱海泉小 岡部靖子先生 気付き、考え、表現する
 最近はスマホで情報を得ることが多く、あふれる情報にリアルタイムで触れることができます。その半面、新聞を読んで、幅広い分野の情報にじっくりと向き合い、正しく受け取る機会が減っているように感じます。
 本校では日頃から子ども自らが、気付き、考え、表現する授業を目指しています。NIEの取り組みをきっかけに新聞に興味をもち、身の回りの出来事に関心を高め、視野を広める子どもを育てたいと思っています。

 静岡由比小 中沢丞先生 持続可能な活動を意識
 本校では、高学年が新聞記事を読み、自分の考えを表現したり、設問に答えたりする取り組みをしています。記事の情報から自分の考えをつくることができる児童が増えています。今後、実践指定校として、子どもたちの語彙[ごい]力の向上と読解力・表現力の向上のために、学校全体で楽しさを基にした取り組みを模索し、無理なく持続可能な取り組みを考えていきます。そして、自ら新聞を手にし、楽しく読める子どもの姿を目指していきたいと思います。

 袋井南小 浦中拓也先生 社会の変化を自分事に
 2学期からの始動に向け、各教科の年間指導計画から、どのような新聞が必要か準備をしています。本校では、学びの重点目標として、「自ら課題をつかみ、解決しようとする子」の育成を掲げています。新聞には、社会全体から地域の身近な出来事まで、たくさんの情報が含まれています。
 NIEの活動を通して、社会で今どんなことが起こっているのか、それに対し自分はどんなことができるのか、自分事として考える習慣が身に付くことを期待しています。

 浜松初生小 大木健太郎先生 読む楽しさ 児童と共有
 現代の情報化社会では、インターネットを使えば手軽に情報を得ることができます。では、新聞にはどのような役割があるのでしょう。新聞にしかない魅力は何なのでしょう。今回NIE実践指定校としての機会を存分に生かし、現代社会における新聞の役割や魅力を教育の立場から考え、実践に取り入れたいと思います。子どもたちに新聞の楽しさが伝えられるよう、職員も新聞の楽しさを味わいながら、実践を進めていきたいと思います。

 静岡サレジオ中 林千尋先生 「市民としての力」養う
 「この問題について、あなたの考えは?」と聞かれたとき、私たちは答えなければなりません。世の中や未来に対する責任からは「分からない」という答えで逃げられません。ある社会学者の言葉を借りれば、「沈黙は同意」です。
 新聞は、社会に対して心を開くきっかけになります。世の中を概観し、問い、調べ、自分の意見を見つけ、行動につなげることができます。NIEを通じて、生徒たちに一人の市民としての力をつけていくことを目標としています。

 浜松開誠館中・高 大庭康介先生 読み比べで情報力磨く
 1人一台のiPadを導入して8年。生徒や教員のICT活用技術は年々向上し、本校の教育理念「学校は楽しく学ぶ場」に向けて着実に前進しています。一方で、ネットで得られる情報を安易に活用し、「この情報は確かなものか」の思考がない生徒もいます。情報リテラシーに関する教育が不十分であることは教育課題の一つです。本校では、NIE活動として「新聞の読み比べ」を行い、数社の新聞を比較し情報リテラシーを養おうと考えています。

 磐田北高 宮崎昌子先生 記事に触れる環境拡充
 探究活動の一環としての新聞活用を本校では計画しています。学年が上がるにつれて、個人や社会の課題を考える機会が増えていきます。他のさまざまな情報媒体とともに新聞を利用することで、その学びをいっそう深めていけると考えています。
 生徒も教職員も新聞に触れる機会が減少している現状を踏まえて、まず、新聞に多く触れられる環境作りに取り組んでいます。生徒たちが新聞から多くのことを学び取れるように努めてまいります。

 浜名高 岩本直子先生 未来を創造する一助に
 本校では、新聞閲覧台が2台、人通りの多い場所に設置されています。常時5紙が閲覧でき、生徒や職員が新聞をめくる姿がよく見受けられます。図書委員は毎日当番制で、記事の確認、新聞の保管等の管理をしています。このように本校では新聞に親しむ機会がさまざまな場面であります。
 新聞に触れる機会を13ある全委員会および定時制でさらに拡大し、生徒が主体的に自分の未来を創造していく取り組みに向け動き出しました。

 

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■紙面授業 国語 AI時代に問われる力 オイスカ浜松国際高 後藤カンナ先生
 古典の授業で「春夜」という漢詩に触れる機会がありました。春の夜のひとときは千金に値するほど素晴らしい、と春の夜の美しさや穏やかさを詠った七言絶句です。
 漢詩の内容にちなみ、各自好きな季節の話になりました。そこから、本校は留学生たちも在籍していることから、彼らの母国の話へ。タイ出身の彼女の住む地域は、夏は50度近く、冬でも30度は超えると聞き、ざわつく教室内。「えー! 30度で冬なんだ」「冬なのに暑い...」などなど。私にとっても、「冬」の言葉の持つイメージとは、あまりにかけ離れていました。そもそも「冬」ってなんだろう。
 「世界大百科事典」(平凡社)によると、冬の定義は「中・高緯度地方で、一年の中で最も低温な季節」とあります。冬は相対的なものであることは、頭では理解しているつもりでも、日本で生まれ育つと、「冬=寒い」という感覚は根強く存在します。
 言葉は風土や文化、習慣と密接に関わっていること。それゆえ、同じ言葉であっても、その言葉が指す事象は地域や文化によって変わってくること。当たり前のことですが、異文化との接触がないと、なかなか知ることはできません。そのようなことを考えさせてくれた場面でした。
 先月、文部科学省が、「チャットGPT」などの生成AIの小中高校向けの指針を公表したことが大きく報じられました。指針では、それらを使いこなす力を育てる重要性に触れていました。
 私たちは、AIによって生成された文章が適切であるか、判断していかなくてはなりません。授業のみならず、さまざまなモノ・コトに出合う中で、視点を地球全体に広げたり、20年、30年後の社会を想像したりして、思考力・表現力を発揮し、AIとも共存していくことが求められているのではないでしょうか。

※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 

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NIEアドバイザーのワンポイント講座(73)古い新聞を「2次活用」

 本年度のNIE実践指定校の先生方と意見交換した際、児童生徒に新聞に関心を持ってもらう方法や新聞の入手手段について話題があがりました。一人一人が新聞を手に取って自由に読み、興味を持った記事をスクラップし、意見を書く。この活動が難しくなっています。新聞の購読家庭が減り、家から新聞を持ってくることが難しくなったことが背景にあります。
 そこで提案です。学校図書館にある新聞の2次活用です。文部科学省は図書館整備計画で学校図書館に新聞を置くよう通知しています。本校では4紙を購読し、3カ月たつと不要になるので、もらい受けてクラスで配布し、スクラップさせています。
 3カ月もたった古い記事でいいのかと思われるかもしれません。しかし、この時、こんなことが話題になったと振り返ることができますし、特集など色あせることなく読む価値のある記事もたくさんあり、生徒にじっくり読ませたいと思います。私はスクラップした記事もコピーして渡しています。
 古くても活用できるのが新聞。まず、新聞を手に取る機会をつくってみましょう。
 (塚本学教諭・常葉大常葉中・高)