一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=記事選び発表 スピーチ力磨く 伊豆・土肥小中一貫校 バトル形式、スクラップも活用

2023年11月05日(日)付 朝刊


■記事選び発表 スピーチ力磨く 伊豆・土肥小中一貫校 バトル形式、スクラップも活用

 伊豆市の土肥小中一貫校の児童生徒が、興味を持った新聞の記事を選んで1分間で紹介する「新ブリオバトル」に取り組んでいる。バトルを企画するなどNIE実践指定校として同校の新聞教育を推進する増田弦己教諭(27)によると、「人前でのスピーチが苦手」といった課題解消のために新聞を活用したという。子どもたちがニュースに触れ、意見を持つ契機をつくり出している。

 
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興味を持った新聞の記事を選んで1分間で紹介する「新ブリオバトル」の本戦で発表する生徒=9月下旬、伊豆市の土肥小中一貫校

 

 新ブリオバトルは5~9年生が対象で、地方紙や全国紙から記事を一つ選ぶ。記事について選んだ理由や感想、訴えたいことなどを発表する。発表を聞いた児童生徒は「声の大きさや強弱」「内容の分かりやすさ」「その記事に興味を持ったか」の3項目をそれぞれ5点満点で採点する。
 選んだ記事の内容は「関東大震災から100年」「土肥の花火」「最も危険な生き物」などさまざまだ。2学期になってから学年ごと授業内で予選会を開き、上位2人が5~9年生約60人の前で発表する本戦に臨んだ。
 本戦では体育館に用意された演台から離れて、聞いている児童生徒に近寄って意見を熱く訴える生徒もいた。採点の結果、1位は9年の小林真菜美さん(14)。「人前で発表するのは緊張したけど、記事について楽しく知ってもらえるのがうれしい」と喜んだ。2位だった9年の高石将吾さん(15)は「ほかの人が気になっているニュースや発表の仕方が勉強になった」と振り返った。増田教諭は子どもたちが生き生きと発表する姿を見て「スピーチの能力が上がってきた」と手応えを口にした。

 

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増田弦己教諭が用意したスクラップブックを読む児童=9月中旬

 
 さらに同校では子どもたちに新聞に親しんでもらうため、空き教室にこれまでストックしてきた新聞数カ月分を設置した。増田教諭は記事を切り抜き、「社会」「防災」「伊豆」など8テーマに分けたスクラップブックも用意。子どもたちは新ブリオバトル開催前や休み時間に、それらを読んで好きな記事を見つけては感想を話し合っているという。増田教諭は「同学年や友達が選んだ記事からニュースに興味を持ち、意見を持つ力もつけてほしい」と期待する。
 (大仁支局・小西龍也)

 
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■紙面授業 国語 日本文化にみる多様性 聖隷クリストファー中・高 金原由貴先生

 長引くウクライナ侵攻を受けて、世界各地でウクライナへの「支援疲れ」が叫ばれています。日本でも関心の薄れを感じる人が多いようです。しかし古来、日本はもっと国際色豊かで、世界に目を向け、つながろうとしていたように思います。
 以前、和歌の宗家、冷泉家25代当主・冷泉為人先生の美術史の講義で、「日本で加工貿易が栄えたのは文化史をひも解けば必然である」というお話を伺いました。これは文学でも同じことが言えそうです。
 例えば、「古事記」に登場する国産み神「イザナギ」について、本居宣長の「古事記伝」では、「誘[いざな]う」の語幹に男性を表す「ギ」がついた言葉だ、と説明されています。一方、室町時代の辞典「アイ嚢鈔[あいのうしょう]」では、仏教の天神「伊舎那天[いしゃなてん]」のことだと記されています。
 さらに、イエスの誕生を預言した「イザヤ」に由来するという説もあります。イザヤはヘブライ語で「神の救い」、「ナギ」は「王、司」を意味するのだとか。
 「旧約聖書」の「イザヤ書」の中にこんな一節があります。「あなたたちは東の地でも主を尊び海の島々でも、イスラエルの神、主の御名を尊べ」。イザヤは紀元前700年ごろの人物です。既に各地に青銅が伝わっていることからも、中国大陸や東の海にある島国・日本を認識していたとしても不思議ではありません。
 そして「古事記」の編さんはイザヤから数えて約1400年後。遠い西の国の物語が、多くの人々の口承を経て日本の国産み物語へ変化していたとしたら...。
 真相は分かりません。ただ、国産み神話が独自のものと考えるより、さまざまな文化を受け入れ加工してできたと考える方が自然な気がします。このように多様性を受け入れられる日本だからこそ、不穏な世界に一石を投じることができる。その一助として、文化の比較研究が求められているのではないでしょうか。
※アイ嚢鈔のアイは土ヘンに草カンムリに去その下に皿

 
※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(76)災害の影響 学ぶ素材に(吉川契子教諭/静岡城北高)

 授業で自然災害を取り上げる目的は、児童生徒が、災害の原因となる自然現象を科学的に理解し、災害予測の取り組みを知り、防災に役立てることにあります。大災害の度に新聞は、災害の状況を伝えてきました。教科書で基本を学んだら災害の後、暮らしがどのように影響を受けるのかを記事から学びたいものです。
 9月22日の静岡新聞1面に「台風15号 あす1年」の見出しで昨年、本県に甚大な被害をもたらした台風15号の災害復旧についての記事があります。河川護岸崩壊や道路陥没などの被害は県・市町合わせて562カ所に上り、うち、県の管理する56カ所で復旧工事が未着手とあります。
 社会面では、静岡市清水区でワサビ田の復旧が進まず、廃業の危機に直面する農家の状況を伝え、大井川鉄道は運休していた一部区間が10月1日から再開するとあります。
 台風15号の「その後」を伝える記事は継続的に掲載されています。
 一度の災害がその後の生活に長期的に影響を与えます。記事でその現実を知ることは、次の災害に備える心構えをする上で効果があると考えます。「災害後」を伝える記事を続けてスクラップし、児童生徒に紹介したいですね。