一緒にNIE

「一緒にNIE」は静岡新聞の「教育」欄で2011年4月にスタートし、2015年4月から「月刊 一緒にNIE」で連載しています。 日本新聞協会認定の県内のNIEアドバイザーたちが教諭や保護者に NIEをやさしく解説し、授業活用のヒントを示しています。NIEへの理解を広げるため、ご活用ください。

月刊一緒にNIE@しずおか・第1日曜掲載=新聞活用「学校」全般に 静岡・清水飯田中

2023年12月03日(日)付 朝刊


■新聞活用「学校」全般に 静岡・清水飯田中

 NIE実践指定校の清水飯田中(静岡市清水区)は、国語や社会の授業内にとどまっていた新聞活用を学校生活全般に拡大しようと本年度から取り組みを強化した。読者欄への投稿や複数紙を常備した新聞コーナーの設置、NIE係による推薦記事張り出しを通じて、生徒が新聞に触れるきっかけ作りを図る。

 

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新聞コーナーに張り出すおすすめの記事を選ぶNIE係=11月上旬、静岡市清水区の清水飯田中

 

 対象は主に2年生。生徒は朝のホームルームを利用して静岡新聞読者欄「読者のひろば 10代の思い」への投書を書き、これまでに16人が採用された。高齢者に高圧的な態度で接する医者の姿を目撃した経験から、患者に寄り添う医療者になろうと考えたエピソードが掲載された大石想乃さん(13)は「全く期待していなかったので家族と一緒にびっくりした。採用後、同世代の意見を知ろうと読者投稿欄に目を通すようになった」と話した。
 各クラス1、2人が務めるNIE係は紙面から興味を持った記事を選び、切り抜いて新聞コーナーに張り出す。国際面をよくチェックするという田島叶夢さん(13)はイスラエル軍のパレスチナ自治区ガザ攻撃を伝える記事を選んだ。世界的なニュースだが「ウクライナとは何が違うのか」「戦争やってたんだ」と校内では知られていなかった。「知って得する、知らなきゃ損する情報を紹介する」とNIE係として記事を選ぶポイントを明らかにした。

 

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NIE係が選んだ記事が張り出された新聞コーナー

 
 NIE係として活動するにつれて新聞を読み込み始めたという吉田帆花さん(14)と佐野葵さん(同)は中学生から見た紙面への要望も持つようになった。「卓球部としてTリーグの話題を張り出すのに、地元静岡ジェードをもっと取り上げてほしい」「吹奏楽部として夏のコンクールの結果があるといい」と具体的だ。
 NIE担当の赤星信太朗教諭(39)は、新聞コーナーが3年生のスペースに増設されるなど新聞活用の学校への浸透を実感する。「中学生活は子どもらにとって苦労も多い。NIEを通じて日々新しい情報に接する環境を実現し、学校を生徒がわくわくできる場所に変えていきたい」と意気込んだ。
 (教育文化部・マコーリー碧水)

 
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■紙面授業 福祉 人々救済に平等の教え 静岡女子高 八木恵美先生

 現在、パレスチナ自治区ガザでは、イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘により、人々が人道危機にさらされています。この争いの背景にあるのが、アラブ人とユダヤ人の対立である「パレスチナ問題」です。とても根深く複雑で、「宗教の対立」ともいわれますが、宗教は福祉と関わりがあることを考えたいと思います。
 「福祉」という言葉には、どちらの漢字にも「幸福」という意味があり、一言で表すと「ふだんの/くらしを/しあわせに」などと表されます。私は「社会で生活する全ての人々が〝自分らしく〟生きていける社会をつくる取り組み」と説明しています。
 この日本の福祉のルーツが、十七条憲法や仏教を広めたことで名高い聖徳太子が開いたといわれる「四箇院[しかいん]」です。四箇院とは、寺院、薬局、病院、病人などのための福祉施設のことです。また、「社会福祉の父」と言われる糸賀一雄は、キリスト教信者であり、戦後、滋賀県に知的障害児の教育を行う近江学園などを創設しました。「死を待つ人の家」を開いたマザー・テレサは、キリスト教の修道女であり、インドで貧困や病に苦しむ人々の救済に生涯をささげました。
 このような宗教と福祉との関わりの根底には「神の前では皆平等」という教えがあります。この教えに従い、仏教やキリスト教などを信仰する人々は、貧困、病気、障害のある人たちのために尽力したのです。
 「宗教」を別の側面から考えてみました。福祉では、その対象となる人のことを考えるときに、「障害」や「病気」だけを見るのではなく、その人自身を見ることが大切だと学びます。
 皆さんにも周りの人や物事に対して、一つの側面や限られた情報から判断するのではなく、視野を広く持ち、いろいろな面から判断するようになってほしいと思います。
 ※県内の中学・高校の先生が、時事のニュースや話題を切り口にした授業を紙面で展開します。

 
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■NIEアドバイザーのワンポイント講座(77)1面コラムに見出しつける(塚本学教諭/常葉大常葉中・高)

 新聞の1面にはコラムが掲載されています。静岡新聞なら「大自在」、朝日新聞は「天声人語」、毎日新聞は「余録」、読売新聞は「編集手帳」などです。こうした新聞社の"顔"とも言えるコラムは記事や社説とは異なる視点でニュースと向き合い、世相を切り取っています。何より、各新聞社が誇る文章の達人が担当していますから名文ばかりです。こうしたコラムに見出しをつけるという試みはどうでしょう。
 見出しを考えるには、深く読み取ることが必要ですので、読解力が身に付きます。内容をズバリ表すよう15字以内にすれば、表現力や発想力も付き、まさに一石二鳥です。個人で考えるのもいいですが、グループを作り、話し合ってみんなで考え、発表し合うことも楽しいものです。
 私はこの4月から生徒に見出し作りに取り組ませています。最初は内容をまとめることに四苦八苦で、要点を並べるだけだった生徒たちが、最近は記事の内容から発想を飛ばし、こちらが思いもよらない見出しを考えてきます。そういえば、2020年9月12日の「大自在」には「縦読み」の仕掛けがありました。「大自在書き写しシート」が静岡新聞NIEのサイトにありますので、ぜひ、1面コラムに注目し活用してみてください。