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「しずおか連詩の会」参加詩人(2):三角みづ紀さん

 11月21日から創作が始まる「しずおか連詩の会」。5詩人の代表作、新作を紹介するシリーズの第2弾です。コメントはあくまで(橋)の感想です。第1回はこちら

三角みづ紀(みすみ・みづき)「隣人のいない部屋」(思潮社、2013年)

IMG_8098.JPG

 昨年3月から4月にかけてスロベニア、イタリア、ドイツを旅した三角さん。本作は、旅先で過ごした28日間に作った28編の詩と30枚の写真で構成されています。

 巻末の都市名に、詩を突き合わせて読みました。風景のスケッチのようでもあり、三角さんの内面の対話のようにも思える、不思議な味わいです。「わたしはわたしと随分仲良くなった」(あとがき)三角さんのやわらかな内面性が、ヨーロッパの街並みと溶け合っているように感じます。

 あえてひらがなを多用しているのも、イメージのふくらみに寄与しています。白地に書かれたひらがなの曲線美。「きゃべつ」「しぬ」「からだ」「はんぶん」「ころして」…。全ての文字が、言葉の意味とはまた別の、フォルムの要請に従って置かれているような気がしてきます。
 心地良いリズムを刻む対句や反復に身を任せているうちに、最後のページまでたどり着いてしまいました。


 
そうやって徐々に
目的だけになって
する ことを
する ために
別の列車に揺られている

赤いフードをかぶった
背の高い彼女はねむった
二時間だけの隣人だ
電話している声が
とてもすてきだった
細くかすれた声で
シ、シ、シ、シ、とわらっていた
呼吸みたい
息たえそう
進行方向を背にして
左の窓に山脈が鎮座する
アルプスだろうか
あまりに突拍子がないから
なかったことにする
右の窓にアドリア海が
満ちて

移動をつづける
町から町へ、町から島へ
そうやって徐々に
目的だけになって
する ことを
する ために
風景がしんで黒い額縁に飾る

ひどく疲れているのかもしれない
もうすぐサンタルチア駅だ
                  (トレイン#2214)


 「しずおか連詩の会」は5詩人が3日間で40編を創作します。完成した連詩は24日午後2時から、静岡市駿河区のグランシップで発表。入場は事前申し込みが必要です。詳細はこちらを参照してください。(橋)

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