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「しずおか連詩の会」参加詩人(1):文月悠光さん

 11月21日から創作が始まる「しずおか連詩の会」。参加する5詩人の代表作、新作を紹介していきます。コメントはあくまで(橋)の感想です。

文月悠光(ふづき・ゆみ)「屋根よりも深々と」(思潮社、2013年)

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 2010年、史上最年少の18歳で中原中也賞を受賞した文月さん。受賞作の「適切な世界の適切ならざる私」に続く第2詩集です。札幌市に住んでいた17歳春から、上京後の21歳冬までに作られた31編を収めています。

 教師、校舎、教室といった高校生や大学生の目に映る人物、事物を巧みに織り込みながら、変わりゆく自分の身体、周囲の環境への違和感や協調を表現しています。臆した様子や、誤解されることへの恐れが一切感じられない、きっぱりとした潔さのようなものを感じました。言葉を繰りだす緩急も印象的。後半に垣間見られる私小説的な要素が、詩集全体のアクセントになっていると思います。
 
わたしのかげは循環している。
つま先を届かせては、
鋭くその身をひるがえし
足もとで順ぐり順ぐり夢を見る。
かげはわたしの囲いとして
わたしはかげの囲いとして
互いをひねもす取り巻いている。
夕陽が鈍い残雨をひきずりながら
耳の奥へと沈みゆく。
まぶしさに息を殺したとたん
かかとを鳴らして
かげは、うつつを追い越した。
「待って」と
囲いを打ち捨て、駆け出せば
わたしの背が
骨の呼吸を打ちあげる。
                  (骨の呼吸)


 「しずおか連詩の会」は5詩人が3日間で40編を創作します。完成した連詩は24日午後2時から、静岡市駿河区のグランシップで発表。入場は事前申し込みが必要です。詳細はこちらを参照してください。(橋)

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