「しずおか連詩の会」参加詩人(3):石田瑞穂さん
11月21日から創作が始まる「しずおか連詩の会」。5詩人の代表作、新作を紹介するシリーズの第3弾です。コメントはあくまで(橋)の感想です。第1回はこちら、第2回はこちら。
石田瑞穂(いしだ・みずほ)「まどろみの島」(思潮社、2012年)
現役の僧侶でもある石田さん。本作は、2006年に急逝した「兄妹のように育った」(あとがき)従妹に捧げられています。
創作のきっかけになったのも、彼女の死。「呆然自失のまま」(同)、スコットランド西端のヘブリディーズ諸島に滞在した石田さんは、いくつもの言葉をノートに書き留めます。本作に収録されている72編の六行詩は、そのノートを頼りにはがきにつづったものです。
時系列的に並んでいる(ように思えます)詩を読み進めると、混乱や困惑が支配する作者の心が、次第に解き放たれていくありようが伝わってきます。大切な人の「不在」と、どう折り合いをつけていくのか。生きていく上で避けられない問いに、答えを見つけようとあがく作者の姿は、読み手一人一人の写し絵のようです。
一つ一つの詩からは、鮮やかな「色彩」を感じます。俯瞰した視点を、手元に引き寄せたり、またはその逆だったり。読んでいると、奥行きのあるスコットランドの風景が、頭の中に広がります。
個人的にはラッセ・ハルストレム監督の映画「シッピング・ニュース」を思い出しました。ザ・ビートルズの「ホワイト・アルバム」のような装丁も魅力の一つです。
小さな奇蹟みたいなものが
まず冷たい石のうえに花を咲かせ
梢から私の肩に
夏の雪 というものを初めて知りました
それは涙にも似て 天から心の底へ
きらめき 溶けてゆく
(「スカイ島 春」~ダンタム城址)
「しずおか連詩の会」は5詩人が3日間で40編を創作します。完成した連詩は24日午後2時から、静岡市駿河区のグランシップで発表。入場は事前申し込みが必要です。詳細はこちらを参照してください。(橋)
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