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映画「選挙2」をめぐるトーク(中)

 8月17日、静岡市葵区のサールナートホールで行われた映画「選挙2」のトーク。パネラーは想田和弘監督、「ライムスター」の宇多丸さん、起業家の家入一真さんです。第1回はこちら。(橋) ※敬称略

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〈想田監督が「観察映画」の原点を語ります〉
想田:学生時代、宗教学を専攻していたんです。その時に「参与観察」っていうんですが、ある宗教団体に信者のふりをして入って、どうやって自分が洗脳されていくかを観察したことがあります。

宇多丸:ミイラ取りがミイラになる可能性もありますよね。

想田:そうです。本当に入っちゃうこともあります。でも僕の場合は信じよう信じようとしたんですが、教義があまりにも荒唐無稽すぎて。教祖が星ツアーっていうのをやるんですよ。祈ると、魂だけがアンドロメダ星雲をツアーするという。一生懸命そういう気分になってみたんですが、そもそも想像がつかない。でも、横を見ると泣いている人もいる。

宇多丸:そういう人は何を見ているんですか?

想田:何かを見ているんでしょうね。その時は当初、オウムに入るつもりだったんです。事件を起こす前。でも、指導教官が「抜けやすい宗教にしなさい」とアドバイスしてくれて。今考えると、助けていただいたなと思います。

〈「観察」とは何か。「政治」「選挙」とは何か。次第にトークが熱を帯びていきます〉
家入:参与観察って、自分自身も関わってしまうわけですよね。本来の「観察」とは形がちょっと変わってしまう。この場合、そこはやむなしなんでしょうか。

想田:自分は消せませんからね。もともと(対象に)かなり接近して撮影してしまうタイプなんです。僕という存在によって変わった存在しか撮れない。

宇多丸:視点が入らないと、現実の羅列になってしまう。字面に落とし込むようなメッセージがない分だけ、作り手のメッセージが強く伝わると思います。

想田:(素材となる映像について)何を選んで、何を選ばないか、どういう順番で入れていくかで僕の視点を打ち出していく。

宇多丸:この映画は2011年に撮られています。それがきちんと伝わってきます。

想田:ヒントは残しておかないと。見る人にそれを手掛かりに推理してもらう。そのことについては意識していますね。こう見えて映画の作り方はトラディショナルなんです。ハリウッド映画というのは、誰がどこで何をしていてどんな問題と格闘しているかについて、最初の10分で開示するのがうまい脚本の書き方とされています。僕の映画も基本的にそうなっている。

〈家入さんが都知事選の際の心情を語ります〉
宇多丸:「選挙」「選挙2」は、他の作品と比べてゴールがはっきりしている。よりハリウッド的な、物語的な構造に乗りやすくはありますね。それから、「選挙2」では悪役的存在がとても魅力的。家入さんは都知事選でリアルに戦ったわけですよね。

家入:僕は山さんと同じようなポジションでした。「教えてください」というスタンス。細川(護煕)さん、宇都宮(健児)さんとも対談しました。細川さんはにこやかな方で「自分は絵を描きたいんだ。今、ふすま絵を描いていて完成するのに10年ぐらいかかる。実は選挙に出ている場合じゃない」といったようなこともおっしゃっていました。僕が感じている政治へのいろいろな違和感を伝えたら、「変えなきゃダメだよね」という話になった。「そういう若者がでてきたらすごくいいよね」と。でも、そこで「命落としてもいいならね」みたいなことをさらっと言われるわけですよ。すげえ怖いなと。

宇多丸:政治家の方って、怖いですよね。何だか威圧感がある。日焼けとかしていて(笑)。みんな体がでかいし。やっぱりジャイアンなんですよ。

想田:独特のにおいがありますね。スーツもサラリーマンとは違う。女性もそう。政治家以外でああいうスーツ着ている人、いないと思う。

家入:ジャイアン的なリーダーを求める僕たちってのは確かにいるんです。ただ、果たして本当に「強いリーダー」が必要なのかとか思いますね。(今は国民全体が)完全にお任せで、ばらまき政治の時代をいつまでも引きずっている。受け身になっちゃっている。

想田:選挙に出たのも、そのあたり違和感がきっかけなんでしょうか?

家入:最終的に決めたのは30代の立候補者がいなかったからなんです。文句を言うだけの人間になりたくなかったから。僕はむしろ適任じゃないと思ってますよ。でも50代以上の立候補者ばかりで。彼らを排除したいというわけではなんですが、僕たちの世代で声を上げなきゃだめじゃんという気持ちでした。

想田:当選すると思っていましたか?

家入:それを言われるとつらいですね。もちろん、受かる気持ちがなかったなんて言ったら「ふざけるな」となる。少なくとも30代が僕に投票してくれたら何かが変わるかも、という気持ちはありました。ずっと、ツイキャスで「選挙に行ってください」と言っていた。若い人が選挙に行って、数字を出すことが先決。僕らが動いたら、これだけ票が動くんだぞということを見せなくては。そうすれば地盤、看板を持っている人があわてるじゃないですか。そのためにはネットを使ってゲリラ的に戦うしかない。結局、僕らの世代の声が無視され続けているという部分ですよね。

想田:民主主義は勝ち負けじゃないんです。選挙の過程で、こんな人がいる、あんな人がいる、支援する人がいる。それが分かる。それも選挙の意義だと思いますね。

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