トップページ >07)アート >「美少女の美術史」展、企画の「トリメガ研究所」鼎談(3)

「美少女の美術史」展、企画の「トリメガ研究所」鼎談(3)

 静岡県立美術館で開催中の「美少女の美術史展」。開幕日の9月20日に行われた同展の企画グループ「トリメガ研究所」による鼎談抄録第3弾です。
 登壇した静岡県立美術館の村上敬さん、青森県立美術館の工藤健志さん、島根県立石見美術館の川西由里さんが、思い入れのある作品について語りました。第1弾はこちら、第2弾はこちら。(橋)※発言者の敬称略

20141008webコラム.JPG

 

工藤:(2010年の)「ロボットと美術」展は、それぞれが専門分野で(作品を)選びました。今回はそれがぐちゃぐちゃ。面白そうなものは、専門分野でなくても選ぼうと。だから、例えば村上さんがかなり、現代作家さんを選んでいたりします。

川西:その中で、お気に入りの作品はどれですか?

工藤:桜文鳥さんですね。世の中に美少女フィギュアはあまたありますが、こういうリアル系、少女を忠実に再現するのは日本で一番うまいと思います。造形が優れているのはもちろん、少女のしぐさやポーズが、本当にリアルに映されている。「本物」でないと生み出せない表現だと思います。ぜひ作品を見ていただきたいですね。少女に対する愛情がほとばしっている。

川西:私は唐仁原希さん。京都市美術館へ行ったときに、(今回の出品作より)ずっと前の作品が展示されていて、興味を持って調べた作家さんです。漫画に影響されている、目の大きな女の子を描きますが、非常に陰鬱な雰囲気の作品が多いですね。例えばMr.の絵は明るい女の子が多い。男性は元気な女の子が楽しそうにしているところを(作品に)求めるのかもしれません。でも、普通の少女たちは必ずしも毎日楽しいわけではない。うつうつとしたり、悩んだりする。唐仁原さんは、そういうところをよく捉えていますね。展覧会ではぜひ、絵の質感を見てほしい。明暗をよく使った、「ザ・油絵」。絵の中の少女は不条理な状況をあきらめたような表情をしています。少女の心の動きをよく表しています。

村上:石黒賢一郎さんの作品ですね。初めて見たのは(雑誌)「美術手帖」に掲載されていた絵の具の広告でした。(描かれている女の子は)アニメーションのキャラクターのコスプレをしていて、頭の飾りや眼鏡は自分の持ち物なんです。撮影会か何かの休憩時間でしょうか。(コスプレに使ったものを)外し、素の自分に戻る瞬間を捉えている。それを、ハイパーリアリズム、質感を追求する技法で描いています。「少女を描いた絵を見る」という行為の「後ろめたさ」が強調されるような気がして、どきどきしました。

工藤:2周目、行ってみましょうか。Mr.の作品は、印刷物だとアニメ絵にしか見えませんが、この展覧会でぜひ実物を見ていただきたいですね。彼は筆で描いているんです。キャピキャピした女の子を描いていますが、筆の跡、色の塗り方から絵画としての魅力を感じていただきたい。奥行きもあるし、細かく文字やオブジェが描き込まれているんです。それを読み解くのも面白い。

川西:大正昭和の少女雑誌に挿絵を描いた松本かつぢ。中原淳一や竹久夢二に比べると一般的な知名度は低いですが、絵がかわいらしいんです。展覧会で紹介しているのは、デフォルメした作品が中心ですが、リアルなものも描ける。画風を器用に変えることができるんです。少女独特のむっちりした足など、単純な線で体の動きや表情をよく捉えています。小さい作品が多いので、ぜひケースをのぞき込んでいただきたいですね。

村上:村山加奈恵さん。東京芸大の修士に在学中の若手作家です。今回の展覧会で写真をもとにしているのは、村山さんの作品だけなんです。真ん中に本人がいて、その周囲に造花やチョウがある。これがみんな、つけ爪を素材にして作られています。暗闇の中に赤や黄色やグリーンが浮かび上がるさまは、ゴージャスで女の子らしくてキラキラしている。どことなくフェイク、安っぽい感じが同居しているのも面白い。濃密で、ロマンティックなまでに少女性を発散していると思います。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

静岡新聞社文化生活部ツイッター ⇒⇒⇒ https://twitter.com/ats_bunka?lang=ja

「彩々プラス」の更新情報もお伝えしています。

コメントを投稿

コメントを表示する前に承認が必要です。コメントが表示されるまで、少し時間がかかる場合がございます。


画像の中に見える文字を入力してください。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.at-s.com/mt1/mt-tb.cgi/48886

トップページ >07)アート >「美少女の美術史」展、企画の「トリメガ研究所」鼎談(3)

ご案内

静岡新聞文化生活部の記者ブログです。
取材時のエピソードなどをアップします。
音楽、アート、鉄道、くらしなどがテーマ。
紙面にプラスのこぼれ話が満載です。


★文化生活部ツイッター ⇒こちら
「くらしず」の更新情報もお伝えします。

★アットエスニュース ⇒こちら
静岡新聞の公式ニュースサイトです。