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アットエス編集部

人気スイーツ店「キャトルエピス」パリで快挙!チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で金賞など獲得!

県内に2店「キャトルエピス」(富士、静岡市)の藁科雅喜さんに「金賞」と「外国人部門  洗練ショコラ賞」

フランスの名店のショコラティエらと共に賞状を授与された藁科雅喜さん(左から3人目)


パリで開催中のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」で、優れたチョコ職人を選ぶ品評会の結果発表が行われ、富士と静岡市で洋菓子店「quatre epice(キャトルエピス)」を営む藁科雅喜さん(静岡市清水区)が、優れた職人に贈られる「金賞」と「外国人部門 洗練ショコラ賞」を受賞しました。
日本に店を持つブランドでは今回唯一の受賞という快挙です。
エントリーした約200のブランドのうち上位14人に贈られる賞を獲得し喜びをかみしめる藁科さんに、作品の特徴やチョコレートに込めた思いを聞きました。(聞き手:アットエス編集部 柏木かほる)

10月28日から11月2日までパリで開催中の「サロン・デュ・ショコラ」に出展中の「quatre epice(キャトルエピス)」のブース

受賞作品は「epice  Japon (エピスジャポン) 日本の香り」

品評会に出品したボンボンショコラ「epice Japon(日本の香り)」。季節感と日本的な香りを追求した


「サロン・デュ・ショコラ」は1995年からフランスの評論家らが毎年開催しています。初日に結果を公表する品評会「C.C.Cショコラアワード」は、世界で最も権威があるとされショコラティエ憧れの難関と言われています。

―受賞した作品「epice Japon(日本の香り)」は4個のボンボンショコラで構成されています。どんなコンセプトで創作したのでしょうか。

藁科:口に入れた時に、日本ならではの食材の味と香りのマリアージュをフランスの人に楽しんでもらいたいと思って考えました。左から「よもぎと苺と薔薇」、隣が「温州みかんと柚子」、続いて「完熟梅とジャスミン」、最後に「レーズンと赤紫蘇」を使っています。4粒を1箱に詰めたショコラです。

ショコラ上面のデザインには使った食材の色やイメージを取り入れた


―よもぎや赤紫蘇など、普段あまりチョコレートでは使わない意外な食材が組み合わされていますね。口に入れた時にどんな味が広がるんだろう?と想像が膨らみます。

藁科:普段の僕はなるべく引き算をしてスイーツを作るタイプなのですが、審査員が全員フランス人なので、今回はあえて味の重なり合いで複雑さをだす足し算していく方法を選びました。

―ひと粒の中で趣の異なる味が顔を出してくるようなイメージですか?

藁科:そうです。人間の味覚は味と香りを別々に捉えています。薔薇は香りの印象が強い一方、味はあまり感じられません。なので苺でしっかり味を伝えながら、違う香りとのマリアージュで奥行きや深みを出したいなと…。
僕は和菓子が好きなので、香りの要素としてよもぎを取り入れました。
味と味がぶつからないようによもぎ味の寒天ゼリーを入れて、その上に苺と薔薇のガナッシュを入れました。そうすることで味と味が重なる前にうまくマリアージュするように工夫しました。

パリで開催中の「サロン・デュ・ショコラ」の様子。ブースの設いにもキャトルエピスらしさを大切にしている


―2つめの「温州みかんと柚子と生姜」は、素材が両方ともかんきつ類で、1つめの味と違って似た味わいの素材を使った印象です。

藁科:温州みかんは甘みが強い割に、香りは弱いと感じていました。一方、フランス人も好きな柚子は味よりも爽やかな酸味と香りが強い。
だからお互いの良さを引き出せると思ったんです。そこに生姜も香りの要素として足して…。頭の中に「味のチャート」を思い浮かべながら少しずつ組み立てていきました。

―聞いているだけで食べてみたくなりますね。

藁科:チョコによって中を1層にしたり2層にしたり…ちょっと香水の調合に似ているところがあるかもしれません。

―まとめ上げていく過程はとてもクリエイティブな作業ですね。

藁科:そうですね。1つのスイーツや料理を作るのと同じ感覚です。ですが、実は今回出品した組み合わせは僕が定期的に開催している「デザートのコース」を味わっていただく会で試してきた組み合わせなんです。
お客様の反応や感想を参考にしているので、受賞作はお客様と作り上げたとも言えますね。

コース仕立てのデザートを楽しむイベント「キャトルエピスデザート」。画像は書籍「お菓子をつくること」より

 

受賞に繋がったウガンダ産カカオとの出会い

―昨年初めて「サロン・デュ・ショコラ」に出展し、品評会にも初挑戦しました。2度目の挑戦での受賞という快挙には、昨年の経験が生かされていると感じますか。

藁科:そう思います。去年は産地ごとに全く異なるカカオ豆の個性を引き出したシンプルな作品で挑んだので、今回は路線を変更し、複雑な味わいを選びました(笑)。
そして何より、昨年この場で出会って親しくなったウガンダ産カカオの生産者から仕入れたカカオを使ったことが受賞に繋がりましたので。

―ウガンダ産カカオ豆の味にはどんな特徴がありますか?

藁科:割とまろやかで酸味がおだやかです。なので「ああ、これは僕が作りたい『日本の香り』に合うな」と直感しました。

普段、豆の仕入れは商社を通して行うので産地の農園主と話す機会はないのですが、現地の状況や労働者が抱える課題などを聞くうちに、ショコラティエとしての視野が広がり、考えも変わりました。

品質の良い豆を生産し、地域経済や労働者の教育や自立も考える園主たちと「顔が見える関係」を築けたことが何よりもうれしいですし。今回の受賞もすぐに連絡しました。



―今回の受賞作は私たちが県内で味わうことはできるのか気になります。販売予定はいつ頃になりそうですか?

藁科:数はどれくらいかまだ未定ですが、来年の1月にキャトルエピスで販売する予定です。

―受賞を受けて県外から訪れるファンがますます増えそうですが、今後の新たな目標などはありますか?

藁科:今回、これまでがんばってきたことが認められて賞をいただけたことはとても光栄でうれしいことです。だけど、「だから何なの?」と、自分で自分に対して思っています(笑)。

2002年に店を始めた時から持ち続けている「お菓子で人を笑顔にしたい」という思いは今も全然変わらないどころかより強くなっています。
だから、きっとこれからも僕のスタンスは何も変わらないと思います。

<DATA>
キャトルエピス富士店
住所:富士市瓜島町152−2 
電話:0545−55−3388

キャトルエピス静岡店
住所:静岡市清水区天神2−6−4
電話:054−371−5020

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