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イトーヨーカ堂の大量閉店が与える衝撃は? 消費経済ジャーナリストに聞く現状と今後

首都圏に集中、食品スーパーへの転換を図る

セブン&アイ・ホールディングスは、赤字が続く傘下の総合スーパー「イトーヨーカ堂」が北海道と東北、信越地方から撤退する方針を発表しました。首都圏に事業を集中して経営の立て直しを図ります。イトーヨーカ堂の現状と今後について、消費経済ジャーナリストで流通アナリストの渡辺広明さん(浜松市出身)に、SBSアナウンサー青木隆太が話を聞きました。
※2024年2月21日にSBSラジオ「IPPO」で放送したものを編集しています。

青木:渡辺さんは浜松市のご出身です。昔は浜松にもイトーヨーカ堂が2店舗あったんですね。

渡辺:そうなんです。1987年、私が大学2年の時に浜松駅前にオープンして、2007年に閉店しました。郊外にショッピングモールができて買い物場所が変わったタイミングでなくなり、街中が寂しくなったと思います。

青木:今は静岡市と三島市に店舗がありますね。

総合スーパーの終わりの始まり

青木:北海道、東北、信越地方からの撤退についてどう思いますか。

渡辺:食品からおもちゃ、文具、アパレルまで取り扱う「総合スーパー」という業態の「終わり」が始まったと思います。総合スーパーは消費者から「なんでも揃っているけど買いたいものはない」とも言われています。

ヨーカ堂はアパレルの自社開発からも撤退し、食品を中心とするスーパーとして再生を考えているようです。正しい選択ですが、首都圏にはOKストアやロピアなど勢いがある食品スーパーがあるので、今からの勝負で勝てるのか疑問を感じています。

青木:撤退する地域の17店全てを閉店または売却するようですが、エリアを縮小するということですか?

渡辺:商品供給や物流網を考えると、エリアで1店舗だけ続けるのは効率が悪いので、全店閉店とか、撤退をしながら事業継承になると思います。

背景に“カテゴリーキラー”やネット通販

青木:今回の大量閉店はイオン系列などライバル店や24時間営業のコンビニ、ネットショッピングとの競争も背景にあるのでしょうか?

渡辺:ユニクロやニトリのような“カテゴリーキラー”と呼ばれる店に売上を取られています。また、イオン単体ではなくショッピングモール(イオンモール)やネット通販にもお客さんを取られ、総合スーパーの役割を終えたと思います。ネットは品揃えの限界がなく、そこと競うのがリアル店舗の厳しいところです。

青木:確かに総合スーパーのアパレルより、ショッピングモールの専門店に入ってしまいますよね。

渡辺:品質は変わらなくても、専門店の方を選んでしまうんです。

青木:閉店して他の店舗になるのではなく、完全に撤退となると買い物ができない人が出てくるのではないかと思います。

渡辺:他の業態を利用できるので、本当にヨーカ堂が好きな人以外は買い物に困らないかもしれないですね。撤退によって雇用が失われる心配もありますが、小売業や飲食業は慢性的な人手不足なので、ヨーカ堂でのスキルを活かせる仕事はありそうです。

東南アジア進出、インバウンド対応がポイント

青木:イトーヨーカ堂の大量閉店が小売業界全体に示すものは何だと考えられますか?

渡辺:日本は人口減少社会なので、国内小売は縮小していきます。東南アジアへの進出、店舗の立地によってはインバウンドに対応できるようにすることが大事です。

青木:17店舗を閉店すると経営が良くなるのでしょうか?

渡辺:なかなか厳しいと思います。食品スーパーに転換し顧客に支持される店を構築できるかが勝負の鍵ですね。

青木:グループ企業のセブン-イレブンはいかがですか?

渡辺:日本人にとってコンビニは空気や水のような存在で、セブン-イレブンはなくならないですね。人口減少で街中にあるコンビニは減っていくと思います。鉄道のホーム売店や工場・オフィス・マンションなど、閉鎖された商圏のマイクロマーケットの出店が加速していくのではないでしょうか。

閉店する前に買い支えよう

青木:グループ全体で考えれば、セブン-イレブンという大きな武器を持っているのは好材料と捉えることもできますか?

渡辺:セブン&アイ・ホールディングスはコンビニの会社になるということですね。昨年は百貨店の西武・そごうも手放しました。

青木:地元のシンボルのようなお店が失われていくのは寂しいものがありますね。

渡辺:そうなんですよ。閉店となると「ありがとう」「なくなると困る」と言うんですけど、その前に買い支えるしかないんですよ。みなさんぜひ買い物に行ってください。

青木:渡辺さん、ありがとうございました。

渡辺:ありがとうございました。

今回お話をうかがったのは……渡辺広明さん
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は講演・商品開発・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

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