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【2024年本屋大賞】大賞を受賞するのは果たしてどの作品か?記者とパーソナリティーが予想します!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「2024年本屋大賞」。先生役は静岡新聞教育文化部長の橋爪充が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2024年4月3​日放送)

(山田)今日は2024年本屋大賞の話題ですね。

(橋爪)いろいろ予想するというのがこの番組の定番になりつつありますね。

(山田)橋爪さんがですね。

(橋爪)今回については山田さんがやれというので(笑)。

(山田)実は僕の持ち込み企画でして。

(橋爪)そうなんですよ。自分としては候補作が10冊もあるので非常にためらいがあったんですが、山田さんから半分ずつ、手分けして読もうという申し出がありましたので、かろうじて応じられました。まず最初に本屋大賞について簡単に説明しますね。

(山田)教えてください。

(橋爪)今回で21回目です。顧客である読者を最も知る立場にいる書店員さんが、売れる本を作りたいという思いから始まりました。出版業界を現場から盛り上げようという意思が込められているそうです。

2004年初開催で、この時に大賞に選ばれたのが小川洋子さんの「博士の愛した数式」です。映画化もされましたね。

(山田)僕が読む本を決める1つの基準は本屋大賞に選ばれているかどうかなんです。

(橋爪)売り上げの面で言うと、出版社が設けている賞よりも本屋大賞は貢献度が高いという話を聞きます。

(山田)やはり本を手に取る基準にされている方は多いのかもしれませんね。

(橋爪)どうやって本屋大賞を選ぶかという話ですが、まず全国の書店員が1次投票として1人3作品を選んで投票します。1次投票の集計結果、上位10作品をノミネート本として発表します。2次投票はノミネート作品をすべて読んだ上で、ベスト3に順位をつけて投票します。

(山田)投票するのは誰ですか。

(橋爪)新刊を扱っている書店の書店員さんという条件になっています。アルバイトやパートも含みます。2次投票の得点換算は、1位3点、2位2点、3位1.5点という配分になっています。その中で最も総合得点が高かったものが大賞になるというルールです。

今年は1次投票を2023年12月1日から24年1月8日まで行いました。全国の530書店の書店員さん736人の投票があり、上位10作品が「2024年本屋大賞」にノミネートされています。

出演者2人で手分けして候補作10冊を読破!

今回はこの10冊を私と山田さんが手分けして5冊ずつ読みまして、それぞれの「手札」から1位になるだろうと予想した作品を披露しようという企画です。

(山田)いいですねー。楽しみじゃないですか。

(橋爪)最初にそれぞれが読んだエントリー作品を紹介しようと思います。まずは私から。
津村記久子さんの「水車小屋のネネ」、夏川草介さんの「スピノザの診察室」、塩田武士さんの「存在のすべてを」、凪良ゆうさんの「星を編む」、多崎礼さんの「レーエンデ国物語」。

(山田)私が読んだ5冊は、川上未映子さんの「黄色い家」、小川哲さんの「君が手にするはずだった黄金について」、富士市出身の宮島未奈さんが書いた「成瀬は天下を取りにいく」、青山美智子さんの「リカバリー・カバヒコ」、知念実希人さんの「放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件」です。

(橋爪)では、それぞれ読んだ作品の中から大賞にふさわしいと思った1作を今から発表します。

(山田)もう予想ということですね。

直木賞的中記者の本命は…

(橋爪)まず私から行きましょう。津村記久子さんの「水車小屋のネネ」です!

まず、分析的に理由を説明します。いろいろ調べると、このところ本屋大賞は女性の作家が強いんです。2023年は、凪良ゆうさんの「汝、星のごとく」が選ばれました。2022年は逢坂冬馬さんの「同志少女よ、敵を撃て」ですが、2021年は町田 そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」、2020年は凪良ゆうさんの「流浪の月」、2019年は瀬尾まいこさんの「そして、バトンは渡された」と選ばれています。

(山田)「同志少女よ、敵を撃て」以外はみんな映画化されているんじゃないですかね。

(橋爪)ということで、ここ5年は5回中4回が女性の作家です。さらにさかのぼってここ10年の受賞者を見ても、8割が女性作家なんです。

(山田)そこの分析から始めますか!

(橋爪)この時代、性別に何らかの傾向を読み取ろうとしすぎるのは良くないこととは自覚していますが、やっぱり女性に響く女性の書き手の作品というのが本屋大賞では強いと思うんです。

(山田)傾向と分析的ですね。

(橋爪)それ以前に、私は津村さんの作品がもともと好きなんです。日本全国の架空のサッカー2部リーグで戦う22クラブの選手とサポーターを描いた連作集「ディス・イズ・ザ・デイ」(2018年)は、本当に名作です。

(山田)面白そうですね。

(橋爪)「水車小屋のネネ」は1981年から2021年まで、10年刻みで5つの連続する物語が収録されています。主人公は1981年の段階で18歳の理佐と8歳の律の姉妹と、ヨウムのネネ。1981年、理佐と律は母親とその恋人との関係に折り合いを付けられず、地元を離れて2人で独立し、知らない街で新生活を始めます。そこにヨウムのネネがいるんです。

保護者代わりとして律を育てる理佐と、当時小学生だった律が成長していきます。1991年には10歳年を取っている、2001年はさらに10歳年を取っていると、だんだん2人とこの2人を取り巻く人たちの成長の物語と街の話が入っていて、その中心にヨウムのネネがいます。

姉妹は誰も知らない街に行ったところから、自分たちで関係性を築き、自分たちのいる場所を自分たちで開拓していく過程を、理佐と律を見守る人たちの押しつけがましくない優しさ、親切とともに描いていて心に染み入ります。

この作品には、スーパーヒーローも出てこないし、謎解きもありません。でも、人を思いやる日常の積み重ねが、回り回って自分にとっても心地よい居場所をつくりあげるという、当たり前の話が淡々と綴られているんです。

(山田)今回、大賞に選ばれると予想したポイントは?

(橋爪)自分の心にどれだけ響いたかということかもしれません。グッとくるフレーズが次から次へと出てくるんです。後半にさしかかると、もう嗚咽をこらえきれないぐらい泣きます。

パーソナリティーの予想は番組に縁のある作家ではない⁉

(山田)そうなんですね。続いて僕の方もいきますね。ゴゴボラケ的に言うと、番組に出演してくれた作家が2人いるんですよ。まずは「成瀬は天下を取りにいく」の宮島未奈さん。そして「リカバリー・カバヒコ」の青山美智子さん。この2人の作品を読んで、このどちらかだと言いたいんですけども…。

(橋爪)違うんですか⁉

(山田)僕は川上未映子さんの「黄色い家」が大賞を取ると予想させていただきます。どんな話か紹介しますね。

ジャンルはサスペンスの要素が強く、テーマは「お金と裏社会」です。舞台は1990年代の東京。 主人公は高校生の花ちゃんという女の子で、 全て花ちゃんの目線で物語が進んでいきます。

花ちゃんは母子家庭で、貧困生活を送っていました。ある日、母親の友人のキミコさんという女性と出会い、ここから人生が大きく変わっていくんです。キミコさんと2人で家を出て同棲し、小さなスナックを始めます。花ちゃんと同じように家出をした子や帰る場所がない子も集まり、4人で住みながらスナックを切り盛りするようになります。

今まで母と古いアパートで二人暮らしをしていた花ちゃんですが、同世代の女の子と、憧れる大人のキミコさんと、自分たちでお金を稼いで貯め、決して裕福じゃないけど自分たちの欲しいものを買うという生活がとてもキラキラしていてまさに青春なんです。読んでても羨ましくもなってきます。 ただ、ある事件をきっかけに、花ちゃんは犯罪に手を染めるようになっていくんです。

(橋爪)おおー。

(山田)そこから、お金を稼いで青春を繋ぎ止めていく話になっていきます。お金、友情ですね。そして、ここがこの本のポイントなんですが、 犯罪とか裏社会を描く題材の本や映画を見ると、よく自分との距離感が出てくるんですけど、この本はもう読んでいる自分が花ちゃんになってしまう没入感があります。犯罪に手を染めていく花ちゃんを見ても「そうだよね。仕方ないよね」と思ってしまうんです。

この本がなぜサスペンスなのかというと、冒頭は現代の花ちゃんがとあるネットニュースを見つけるところから始まり、 記事の中には20代の女性を監禁、暴行して逮捕された無職で60歳の女性「吉川黄美子」 の名が。そこから物語は20年前にさかのぼって進んでいくという展開なんです。

(橋爪)面白そう。

(山田)ただ、受賞に向けて1つだけ懸念があるのは「長い」こと。文庫本で606ページ、僕が読んだ電子版で570ページありました。ここだけ心配。

(橋爪)でも没入できるんですよね?

(山田)めちゃくちゃ没入できるし、涙も出ます。

(橋爪)今の話を聞いていると「水車小屋のネネ」と「黄色い家」は、設定や時間の経過とともに登場人物がどう変わっていくか、周囲の環境がどう変わっていくか、という点は似てるかも。

(山田)似てる!

(橋爪)いやー、私も「黄色い家」、読みたくなりました。

受賞するのは「黄色い家」か「水車小屋のネネ」!


(山田)僕は願わくば「成瀬は天下を取りにいく」か「リカバリー・カバヒコ」に取ってほしいんですよ。

(橋爪)縁があるからですよね。予想はなかなか難しいですね。

(山田)難しい。あと、「星を編む」も読みたいですね。

(橋爪)「星を編む」もいい話なんですけど、凪良ゆうさんはここ5年で大賞を2回取っているんですよね。書店員さんが3回目を選ぶかなと考えてしまうんですよね。

(山田)それで言えば「リカバリー・カバヒコ」の青山美智子さんはノミネートが4回目かな。だとすると、そろそろ取るのではないかとも思ってしまいますね。

(橋爪)なるほど。そういう見立てもいいですね。書店員さんも同じことを考えていそうですよね。

(山田)なので、全部可能性あるってことで!

(橋爪)それ、日本アカデミー賞を予想したときに批判されましたよ(笑)。とりあえず、お互いに1作に決めましょう。

(山田)僕は「黄色い家」にします。

(橋爪)私も「水車小屋のネネ」で。このどちらかが大賞を取るだろうというのが番組としての見解でいいですか?

(山田)はい。発表は来週ですね。

(橋爪)4月10日ですね。

(山田)どうなるんでしょうか。皆さんもできたら1週間でこの2冊を読んでみてはいかがでしょうか。今日の勉強はこれでおしまい!

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