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東レアローズ、いざ黒鷲旗選抜バレーへ。ラスト舞台に挑む篠田監督と峯村雄大、真子康佑が胸に秘める思いとは…

第72回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会は5月1日、Asueアリーナ大阪で開幕します。V1男子の東レは今大会限りで篠田歩監督が退任、アウトサイドヒッター峯村雄大選手とリベロ渡辺俊介選手、徐克選手が退団、セッター真子康佑選手が引退します。篠田監督、峯村選手、真子選手に黒鷲旗への意気込みと今後の展望などを聞きました。

篠田監督、今季限りの退任はシーズン前に決めていた

選手の自主練習を手伝う篠田監督

篠田監督は2014年に現役引退後、コーチを経て2019年に監督に就任しました。今季限りでの退任はシーズン開幕前から決めていたそうです。「3年目まではいろいろありながらも面白かったですね」。けれどもその後は苦労の連続でした。コロナ禍でパダル・クリスティアン選手の合流が遅れて開幕に間に合わなかったこと。天皇杯や黒鷲旗が中止になったこと。そして何より、セッター藤井直伸さんの逝去。「藤井に期待してキャプテンにして、(シーズン)前半で走って、優勝できると思っていた」。司令塔を失ったチームの立て直しに必死で取り組みました。

今季、篠田監督の就任以来、初めてのプレーオフ進出を果たし、リーグ3位という成果を残しました。チームの成長を感じたのは3月9日の東京GB戦。「プレッシャーの掛かる場面を乗り切った。(その後の)プレーオフも意外と固くならずにできた」とうなずきます。

黒鷲旗は山田大貴、小野寺瑛輝、武田大周の新人3人に期待!

最後の采配となる黒鷲旗で期待するのは新人のアウトサイドヒッター山田大貴選手、セッター小野寺瑛輝選手、リベロ武田大周選手です。「新人3人がどのくらいできるか、見せてもらいたい。力は持っている。試合でできるかどうか」と楽しみにします。中でもセッター小野寺選手について「技術はまだまだだが、気持ちがいい、迷いがない。自信を持って(トス)を上げていて、スパイカーを乗せる力がある」と高く評価します。また、守備の要だった富田将馬選手が退団したため、守備範囲の広い武田選手の役割が重要になると見ています。

黒鷲旗を前に、全体練習後も選手のレシーブ練習に付き合い、ひたすら強打を打ち込み続ける篠田監督の姿がありました。退任後はスタッフとして、ジュニアの指導などにあたります。

峯村は海外挑戦を視野、東レ最後の大会も主将の役目全うする

黒鷲旗へ意気込みを示す東レの真子選手(左)と峯村選手。と、背景に小さく写り込む李選手と渡辺選手=三島市の東レ体育館

峯村選手は7年間在籍した東レを離れる決意をしました。海外挑戦も視野に、移籍先を探すそうです。将来は教員志望。「人生経験、バレーの経験、いろんなことを経験して、次のキャリアに生かせたら。まずはバレーボーラーとしてやり切りたい」と話します。小、中、高校、大学の全てでキャプテンを務めてきた峯村選手。「(主将の)経験はあったけれど、(東レでは)自分が出ていない中でどうみんなを引っ張っていくかが難しかった。もがきながら、周りに支えてもらいながらやってきた」。1番印象に残ったのは今季、リーグ3位になった瞬間だそうです。「チームみんなで勝利のために、必死だった」と一丸となれた手応えを感じました。

プレーヤーとしては「自分はもともとパス型で、目立たないけれどチームに必要とされるプレーヤーを目指してきた。東レでは米山(裕太)さんを越えられなかったけれど、今後も縁の下の力持ち、オールラウンダーとしてやりきれたら」と意欲を語ります。

藤井さんからキャプテンを引き継いだ時、心構えを聞いたそうです。「藤井さんは『チームが勝つために何が必要かしか考えていなかった』と即答でした」。東レで最後の大会に向けて「チームとして勝って終われるように」と主将の役目を全うします。

重圧に苦しんだ真子、同期2人に後を託す

真子選手は入団から3年間、重圧に苦しんできました。「トスを上げるのが怖くて眠れなくなった。バレーを続けたい気持ちはあっても、チームの力になれるかどうかを考えると、なれないと思った」と引退を決めた理由を明かしてくれました。

入団後、正セッターだった藤井さんが闘病のためチームを離れ、出番が巡ってきました。「チャンスではあったし、出たい気持ちもあったけれど、弱かったです」。3年間で思い出すのは苦い経験ばかり。2022年3月のJT広島戦、勝てばプレーオフの大一番に敗れ「終わらせてしまった」と自身を責めたそうです。
 
同期の西本圭吾選手、難波尭弘選手のミドルブロッカー2人に今後の東レを託します。189センチとミドルブロッカーとしては小柄な西本選手が、今季はブロック決定本数でリーグ2位になり、初の日本代表入りを果たしました。「報告を受けた時はうれしくて。あいつはバレーが大好きで、チームのことをすごく考えている。努力、実力で(日本代表に)入った」と喜びます。

引退後はスタッフとしてチームに残ります。「選手に近い立場で選手の気持ちがくめると思う。この3年間支えてもらってきた分、支えられるようにしたい」と、穏やかな表情で語りました。
シズサカ シズサカ

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