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トンネルを再利用した天然のワインセラーで日本酒を熟成!?

静岡県は「吟醸王国静岡」と呼ばれるように、全国でも人気を集める酒蔵がたくさんあります。この夏、静岡の地酒を使った、あるプロジェクトが行われました。それは「今は使っていないトンネルを再利用した天然のワインセラーで静岡の地酒を熟成させよう」というもの。クラウドファンディングサイトで協賛を募ったところ、人気となり完売したそうです。日本酒の熟成って、どんなものなのか気になりますよね。今回は、このプロジェクトの代表で、富士の酒代表の榛葉冴子さんにお話をうかがいました。
※9月9日にSBSラジオ、IPPOで放送したものを編集しています。
熟成日本酒
岡村アナ:「トンネルを再利用した天然のワインセラーで日本酒の熟成」という夢のある壮大なプロジェクトですが、始めようと思ったきっかけを教えてください。

榛葉さん:静岡県日本酒研究会という名前でこのプロジェクトを始めました。ちょうどコロナ禍で世の中が異常な緊張感に包まれるさなか、天竜の森の大自然の恩恵を受けたトンネルに出会ったんです。このトンネルは「浜松ワインセラー」という天然のワインセラーなんですが、電気を使用しない天然の冷蔵庫ということで、まさに時代の最先端をいく環境への配慮としても注目しました。

岡村アナ:どのような感じのトンネルなんですか?

榛葉さん:実際には使用されなかった鉄道未成線のトンネルで、全長が1km以上もあります。トンネル内はとても静かで空気もしっとりとして、熟成にいい菌が生息しているようなすてきな空間です。静岡の日本酒をここに貯蔵したら、おいしいお酒になるかもしれないと思いました。

岡村アナ:「天然のワインセラー」と呼ばれる場所で熟成させた日本酒は、味わいも変わっていくものですか?

榛葉さん:そうですね、お酒の味がより深まるという特徴があり、味の追求を楽しめます。飲んだ後の余韻も長くなっていくため、和食はもちろん、洋食、中華、チーズ、デザートなど、いろいろな料理と相性がいいんです。時間をかけてお酒の飲み頃を待つことで、まろやかにもなってきます。実際に口当たりも柔らかな感じ。科学的にも、熟成によりアルコール分子が水分子に取り囲まれるので、アルコールが水に包まれた状態になり、胃の粘膜への刺激が減り、内臓への負担も軽減するともいわれています。

岡村アナ:ワインだと何年物、泡盛だとクース(古酒)などといいますが、日本酒も熟成させる製法は、もともと行われているものなのですか?

榛葉さん:熟成は、日本酒も古来から行われていますよ。世界をみても、アルコールの熟成の歴史はとても長くて奥深いものなんです。ただ、日本酒の場合は近代の酒税の関係で、出荷後にすぐ飲むような流れになってしまっているところもあります。

岡村アナ:時代の流れとともに、熟成していない日本酒の方が人気となっていった……ということなんですね。今回、静岡のお酒を使って熟成日本酒を作り、いくつかのパターンにチャレンジされたそうですが、内容を教えてください!

樽が日本酒の味の奥深さを引き出す

月詠み
榛葉さん:
この熟成酒のシリーズを「月詠み(つきよみ)」と名付けました。月の満ち欠けのように、月日を経て熟成による味わいの変化を楽しむことができます。特徴として貯蔵スタイルにバリエーションもつけました。ワイン樽やウイスキー樽に入れてみる、蔵で作ったお酒をそのまま瓶で貯蔵するというようなスタイルです。

味については、ワイン樽で熟成している掛川の土井酒造「開運」の場合、もとはお米で作った日本酒ですが、上質な白ワインのような爽やかな香りと、樽の素材であるオークのスパイシーさやナッツのような木の香りがします。冷やして飲んでいただくと、フレンチやイタリアンのオードブルとも合いますし、常温であればスパイスの効いた肉料理やジビエ料理とも相性がいいですよ。
 
また、県内の蔵元で作られたお酒20種類ほどを瓶に入れています。それぞれのお酒に特徴がありますが、お酒の甘味、酸味、アルコール感などの要素が熟成することによって、だんだんまとまってまろやかになり、より味の奥深さを感じていただけます。

岡村アナ:ワイン樽とウイスキー樽は大きさや形など、まったく違いますか?

榛葉さん:大きさも形も違いますし、素材もそれぞれアメリカのオークやフランスのオークを使うなどしています。どんな味をつけるかという目的によって、ウイスキーであれば樽の中を焼くという作業をするんですが、焼き方にも何種類ものレベルがあるんです。「強く焼く」のと「柔らかく焼く」のでは香りが全然違ってきます。

岡村アナ:目的に合わせた樽に日本酒をいれることで、味の奥深さを引き出してくれるということですね! クラウドファンディングは終わってしまいましたが、このお酒を味わうことができる機会はありますか?
月詠みシリーズ
榛葉さん:今後はECサイトも立ち上げる予定です。このシリーズはデザインやボトルもスタイリッシュにこだわっています。ぜひ「静岡県日本酒研究会」、ご覧になってみてください。
 
岡村アナ:「月詠み(つきよみ)」ラベルも満月だったり下弦や上弦の月をデザインしていてすごくおしゃれですよね! こういったところも一緒に楽しんでいただけたらなと思います。コロナ禍ということで、おそらく酒蔵もお酒を楽しめる飲食店もすごく大変だと思うのですが、お話を聞いていて、みなさんが思いをひとつにして協力し合っているなと感じました。

榛葉さん:残念ながら飲食店など、外でお酒を飲んでいただく機会が減ってしまっていますが、こういった活動がお酒の楽しみ方に興味をもつきっかけになればと思います。静岡県日本酒研究会を通して、県内の蔵元さんたちや飲食店さん、酒販店さんたちと共に、新しいことにチャレンジしていますので、お酒のさまざまな一面を発信していきたいと思っています。ぜひ、興味をもっていただければ嬉しいです。
 
今回お話をうかがったのは……榛葉冴子さん
鎌倉生まれ。幼少期から身近にある海や山の食に触れて育つ。酒匠の資格を取るために、土井酒造場の体験実習で酒造りを学ぶ中で、現在は杜氏職を務める夫と出会う。結婚を機に掛川市に移り住み、出産後、大好きなお酒を仕事にしたいと<富士の酒>ブランドを立ち上げ、ECサイトとイベント業を中心に静岡×日本酒のプロデュースを行っている。
 

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