反攻加速へ米クラスター弾歓迎 ゼレンスキー氏、同盟内に温度差

 【キーウ共同】ウクライナのゼレンスキー大統領は7日、米国が表明したクラスター(集束)弾の供与を含む新たな軍事支援を歓迎した。反転攻勢を加速させる狙いだが、民間人の無差別殺傷の危険があるクラスター弾は条約で禁じられている。北大西洋条約機構(NATO)主要国のドイツは自国が供与する可能性を否定するなど、同盟内には温度差もある。

ドイツ・ベルリンで展示されたウクライナの救急車。車体にはクラスター(集束)弾による穴が見られる=5日(AP=共同)
ドイツ・ベルリンで展示されたウクライナの救急車。車体にはクラスター(集束)弾による穴が見られる=5日(AP=共同)

 ゼレンスキー氏は7日、ツイッターに「タイムリーで広範囲に及ぶ待望の支援だ」と投稿。ロイター通信は、ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問がクラスター弾について「既に士気が低下したロシア軍に心理的な影響を与えることができる」と述べたと伝えた。
 ウクライナ側が支援を歓迎する背景には反攻に必要な砲弾が不足し、ロシア軍の強固な防御を崩せていない現状がある。
 ロシア外務省のザハロワ情報局長は8日発表した声明で、クラスター弾が不発弾となり紛争収束後にも爆発を引き起こす恐れがあるとして、米国が「ロシアとウクライナの子どもを含めた犠牲者への責任を負う」と供与の決定を批判した。
 クラスター弾の使用や製造を禁じたオスロ条約には110カ国超が参加。ドイツメディアによると、同条約に加盟するドイツのピストリウス国防相は、自国がクラスター弾を供与する可能性について「論外だ」と述べ、否定した。
 米国やロシア、ウクライナは同条約に署名していない。
 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)はロシアがウクライナ侵攻を開始した昨年2月以降、ロシア、ウクライナ双方がクラスター弾を使用したと指摘。HRWの報告書によると、ロシア軍は同4月にクラスター弾搭載の短距離弾道ミサイル「トーチカU」でウクライナ東部ドネツク州クラマトルスクの鉄道駅を攻撃し、少なくとも58人が死亡、100人以上が負傷した。

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