内閣支持率６ポイント増 苦境の首相、浮揚わずか 小渕氏起用に疑問符【表層深層】
内閣改造・自民党役員人事を受けた共同通信世論調査で、政権浮揚効果はわずかだった。岸田内閣支持率は８月の前回調査から６・２ポイント増の３９・８％。不支持率と拮抗し、苦境を脱したとは言い難い。過去に「政治とカネ」問題を抱えた小渕優子氏の党選対委員長起用には疑問符が突き付けられた。
▽不満
「無駄な人事だったかもしれないな」
１４日、閣僚の一人はため息をついた。６月以降、岸田文雄首相の長男翔太郎氏の秘書官辞任やマイナンバーカードを巡るトラブルで続落していた内閣支持率。改造人事で回復を期待したが、効果は限定的だった。
内閣の支持理由は「ほかに適当な人がいない」が４５・１％と、消極的な理由がダントツだ。対して不支持理由は「経済政策に期待が持てない」が３８・７％で最多。首相が優先すべき課題を選ぶ問いも「物価高対策を含む経済政策」が５３・５％と過半数で、ガソリン価格高騰対策などが足りないとの不満がうかがえる。
首相は１３日の改造内閣発足後の記者会見で、１０月中に物価高対応や賃上げ実現に向けた経済対策をまとめると表明した。公明党の山口那津男代表は「優先課題だからしっかり取り組みたい」と引き締める。自民中堅は「家計を温めてほしいとの期待に応えなければ、さらに失望させてしまう」と世論の行方を案じた。
▽内向き
首相は過去最多タイの女性閣僚５人を登用して刷新感を狙ったが、評価は厳しい。自民支持層でも「適材適所」という首相の説明を額面通り受け止めたのは、３１・１％にとどまる。６５・３％は「派閥に配慮して決めた」と実態を見透かした。
首相と距離を置く自民の閣僚経験者は、「ポスト岸田」候補とされる茂木敏充幹事長や河野太郎デジタル相、高市早苗経済安全保障担当相の続投に「総裁再選を最優先にした内向き人事」とあきれた。
立憲民主党の長妻昭政調会長は、世界平和統一家庭連合（旧統一教会）と過去に接点があった盛山正仁氏の文部科学相起用を疑問視。「文化庁が解散命令請求しようとしているのに、あり得ない」と憤る。日本維新の会の藤田文武幹事長は、厚生労働相や農相に族議員を起用しており「改革姿勢がない」と批判した。
▽アキレス腱
政権にとってアキレス腱になりそうなのは、首相が「選挙の顔」に選んだ小渕氏だ。自民支持層ですら４７・６％が、起用を「適切ではない」と回答した。「支持する政党はない」とした無党派層では６６・１％に上る。
小渕氏を巡っては１３日、関係する政治団体の不明朗支出疑惑が週刊文春のニュースサイトで報じられた。１４日、党本部で記者団に囲まれた小渕氏は「法に反することは全くない」と反論したが、自民参院筋は「道義的に問題だ」と話す。共産党の小池晃書記局長は「政治とカネの問題を追及していく」と突き上げた。
内閣改造を受け、与野党からは早期の衆院解散観測も漏れる。立民の岡田克也幹事長は１４日「１０月中の可能性がかなり高い」と警戒した。
世論調査で政党支持率は自民、公明両党がやや上がった一方、立民や維新は横ばいか、やや低下。閣僚経験豊富なベテランは「党幹部や閣僚にスキャンダルが発覚すれば、あっという間に下り坂。解散なんて危険な賭けだ」と語った。
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