BM社の不正、工場長が中心役割 従業員「現場は従うしかない」

 中古車販売大手ビッグモーターの一連の問題を巡り、国土交通省が行政処分案を公表した工場のうち一つの従業員が14日までに取材に応じ、工場長が中心となって、不要な「タワーけん引」や塗装といった作業を繰り返し指示していたと証言した。「工場長は、どうにかして保険請求額を上げようとしていた。指示があれば現場は従わざるを得なかった」と実態を明かした。

ビッグモーター浦和美園店で行われた国交省の立ち入り検査=7月、さいたま市
ビッグモーター浦和美園店で行われた国交省の立ち入り検査=7月、さいたま市

 同社の外部弁護士による調査報告書でも、工場長が率先して車両の損壊をしていたケースを指摘。背景には「工場長会議」での厳しい指導、不合理な目標設定や手続きを無視した降格処分があったとしている。国交省は本社から法令違反につながる指示があったかどうかなど組織的な関与の有無についても解明を進める。
 従業員の証言によると、具体的な手口として、事故車が工場へ入庫すると工場長や「フロント」と呼ばれる受付担当者が車体に損傷を増やした上で写真に撮り、社内の見積もり部門と共有していた。保険請求額を上げるため、手作業で修理できる損傷でも「タワー」と呼ばれるけん引の装置を使うよう求めていた。
 従業員は「傷のない所を修理することもしょっちゅうあった。いずればれると思っていた」と明かす。
 調査報告書によると、社内では、車両修理1件当たりの工賃と部品粗利の合計を「@(アット)」と呼び、これを上げることが重大使命とされていた。工場長会議では、アットの平均値が低い工場長は厳しく理由を問い詰められていた。複数の工場長は外部弁護士の調査に「工場長会議での追及を恐れ、不適切な行為に手を染めるようになった」と説明している。
 アットの成績は、昇格人事にも影響。ある工場長は「出世欲から、自ら率先して車両の損壊に及ぶだけではなく、部下にもこれを強いるなどしていた」という。
 国交省は、13日にビッグモーターの34工場に対する自動車整備の事業停止や民間車検場の指定取り消しなどの行政処分案を公表。20日にビッグモーター側の意見を聞く「聴聞」を行う。

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