【科学する人】観測天文学者 大内正己さん① 初期の宇宙 解明に挑む

 約138億年前に誕生した宇宙は大昔にさかのぼるほど謎が多い。東京大宇宙線研究所と国立天文台で教授を務める大内正己さん(48)は、日本のすばる望遠鏡や米国のケック望遠鏡などの大型望遠鏡を駆使してはるか遠くの宇宙を観測し、謎の解明に挑んできた。

研究について語る大内正己さん
研究について語る大内正己さん

 天体からの光は地球に届くまでに長い時間がかかる。例えば130億光年離れた天体の観測は、130億年前の姿を見ていることになる。天文学者は初期の宇宙を知るため、より遠い宇宙の観測を目指している。
 大内さんは2009年、誕生から8億年程度しかたっていない宇宙に桁違いに明るく巨大な銀河が存在すると報告し世界を驚かせた。小さい銀河が合体を繰り返して大きな銀河ができたという通説から外れていたためだ。謎に包まれる邪馬台国[やまたいこく]の女王卑弥呼にちなみ、この銀河を「ヒミコ」と名付けた。
 その後の研究で、ヒミコでは三つの銀河が衝突する珍しい現象が起きていた可能性があると分かった。しかし、この現象がヒミコの巨大さの理由かどうかは未解明だ。
 「大昔に宇宙規模で何が起きたのかを追究し、私たち人類や地球がどこから来たのかという問いへの答えを探れるのがこの研究の魅力。より遠くへと進み、私たちが知る宇宙の地平を広げたい」と話す。

 おおうち・まさみ 1976年東京都出身。東京大大学院博士課程修了。米カーネギー天文台や東京大宇宙線研究所准教授を経て2019年から現職。

 

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