「職種限定」合意下での勤務 同意なき配置転換認めず 最高裁初判断

 技術職として長年勤務した従業員を事務職に配置転換することの妥当性が争われた損害賠償請求訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は26日、職種を限定する労使合意がある場合、使用者が労働者の同意なく配転を命じる権限はないとの初判断を示した。命令は違法と結論付け、適法とした二審大阪高裁判決を破棄。賠償責任の有無などを検討させるため審理を差し戻した。
 配転命令を巡っては過去の判例などから、職種や勤務地を限定する合意があれば配転が制限されるとの考え方が以前からあり、今回の判決が改めて明確化した形だ。職務や勤務地を定めて採用する「ジョブ型雇用」が広がる中、企業の人事労務に影響しそうだ。
 第2小法廷は「労働者の職種や業務を特定のものに限定する合意がある場合は、使用者は労働者に対し、同意なく配転を命じる権限はない」と判示した。
 原告の代理人は東京都内で記者会見し「当たり前の判断ではあるが、最高裁が改めて確認した社会的意義は大きい」と話した。
 原告の男性は滋賀県社会福祉協議会と労働契約を結び、福祉用具センターで主任技師として勤務。2019年4月付での総務課への配転を命じられた。
 男性側は、同一職種・同一部署で18年間にわたり勤務してきたとして「書面での明示はないものの、技術者として就労させる旨の職種限定の合意が事実上あった」と主張。配転命令は無効だとして、損害賠償を求めて提訴した。団体側は「職種限定採用ではなく、配転には業務上の必要性もある」と反論していた。
 一審京都地裁判決は、男性は溶接のできる唯一の技師で「技術職として就労させる黙示の合意があった」とする一方、配転命令は業務廃止による解雇の回避が目的で、必要性があり有効とした。二審大阪高裁も支持した。

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