南北の板門店宣言発表から6年 双方が軍事力誇示で緊張

 【北京、ソウル共同】2018年4月に北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記(当時は委員長)が韓国の文在寅大統領と会談し、朝鮮半島の「完全な非核化」を確認した板門店宣言を発表してから27日で6年を迎えた。金氏は今年1月、核の増産方針だけでなく、韓国との平和統一を放棄する意向を表明。宣言の理念はかすみ、双方が軍事力を誇示する緊張関係が続く。

2018年4月の南北首脳会談で板門店宣言に署名した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と韓国の文在寅大統領=板門店の韓国側施設「平和の家」(韓国共同写真記者団・共同)
2018年4月の南北首脳会談で板門店宣言に署名した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と韓国の文在寅大統領=板門店の韓国側施設「平和の家」(韓国共同写真記者団・共同)

 「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のため」と銘打った宣言は、両首脳の定期会談や敵対行為の全面停止などを盛り込んだ。だが19年2月の米朝首脳再会談の決裂後、南北関係は停滞。22年に誕生した尹錫悦政権が「力による平和」を唱えると、北朝鮮も対抗姿勢をむき出しにするようになった。
 互いを同じ民族とみなさず平和統一を放棄すると先に表明したのは北朝鮮だ。ただ韓国でも水面下で動きがあった。
 1994年に韓国の金泳三政権が段階的な統一を目指して打ち出した「民族共同体統一案」に関し、尹政権は見直しに着手。昨年10月、韓国メディアは統一への一部工程と「同一民族」の理念を削除する案が検討されていると報じた。北朝鮮は、この動きに敏感に反応し、政策転換に踏み切ったとの見方が出ている。
 統一案の発表から30年となる今年、尹政権は新たな統一構想を発表する方向で準備を進めている。金暎浩統一相によると「自由と人権の価値」を盛り込む方針で金正恩体制とは相いれない内容だ。南北が対立局面を抜け出す兆しは見えていない。

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