コロナ“震源地”海鮮市場、移転 武漢、起源はやぶの中

 世界で初めて新型コロナウイルスの集団感染が確認された中国湖北省武漢市の「華南海鮮卸売市場」がひっそりと移転、再開していた。ウイルスの起源とも指摘される旧市場は立ち入ることもできず、感染が世界的大流行に至った真相はやぶの中。現地では市場関係者らがコロナ“震源地”の負のイメージを払拭しようと躍起になっていた。

移転して営業を再開した「華南海鮮卸売市場」=3月、中国湖北省武漢市(共同)
移転して営業を再開した「華南海鮮卸売市場」=3月、中国湖北省武漢市(共同)

 旧市場から北東約15キロの武漢郊外に1年前にオープンした新市場を3月に訪れた。「かつてのようなにぎわいを取り戻せるよう頑張る」。新型コロナ禍で閉鎖された市場を拠点にしていた飲食業男性(55)が意気込む。
 新市場の延べ床面積は旧市場の5倍超の28万4千平方メートル。精肉店や鮮魚店、飲食店が多く軒を連ねる。オオサンショウウオとみられる生き物が水槽でうごめき、冷凍ケースにはワニの尻尾が無造作に置かれていた。
 客足はまばらだ。羊の精肉店で働く女性(43)は「商売は必ずしも順調ではない」とこぼす。「旧市場はコロナの起源だと悪評が立った。移転は仕方なかった」と諦め顔だ。
 一方、旧市場は現在も塀で囲まれ、関係者以外の立ち入りが規制されている。英オックスフォード大などの動物研究者らによる論文によると、旧市場では感染流行前の2年半にハリネズミやタヌキをはじめ4万7千匹を超える野生動物が生きたまま売買されていた。
 米アリゾナ大などは、旧市場が感染流行の起源とする研究結果を公表。人への感染につながる中間宿主となり得る動物がいた可能性を指摘する声は根強いが、中国疾病予防コントロールセンターはウイルスの起源は不明だと主張している。
 武漢市でコロナ流行による世界初の都市封鎖が解除されてから今年4月で4年。当局による隠蔽、失策の責任を指摘する当時の報道や市民の証言といった記録の大半は削除された。感染拡大の象徴的存在でもあった市場は姿を変え、コロナに関する記憶は政治的な思惑を背景に薄れつつある。(武漢共同)

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