日本の技術で月面探査へ 開発進むルナクルーザー

 日本人の宇宙飛行士2人が月面着陸する見通しとなった国際月探査「アルテミス計画」で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とトヨタ自動車などが探査車「ルナクルーザー(愛称)」の開発を進めている。飛行士が宇宙服なしで乗れ、生活しながら月面の広範囲を移動できるキャンピングカーのような宇宙船だ。長期間の移動を伴う月探査は人類初の試みになる。

月面を走行する「ルナクルーザー」のイメージ(トヨタ自動車提供)
月面を走行する「ルナクルーザー」のイメージ(トヨタ自動車提供)

 探査車には気圧を調整し、地上に近い環境にする与圧キャビンという密閉空間があり、正式には「有人与圧ローバー」と呼ばれる。概念設計では、全長6メートル、幅5・2メートル、高さ3・8メートル。マイクロバス2台分の大きさに4畳半の空間を備える。飛行士2人が約1カ月、寝泊まりできる想定だ。
 月面は大気がほぼなく、強い放射線が降り注ぐ。昼は110度、夜は氷点下170度にもなる危険な環境で、身を守るために頑丈な宇宙服が不可欠になる。脱いで過ごせる車内の環境は長期探査では重要な意味を持つ。
 動力は水素と酸素を反応させる燃料電池を使うなど、日本が強みを持つ自動車技術を最大限に活用する。月の重力は地球の6分の1、地表は細かな砂で覆われている。空気を入れたゴムタイヤは使えないため、ブリヂストンが金属製の特殊なタイヤを開発中だ。
 早ければ2031年にも打ち上げられる。アルテミス計画で初の有人月面着陸は26年が目標で、1人目の日本人飛行士は28年とみられるため、2人目の日本人が運転を担うことが期待される。
 開発費は総額で数千億円と見込まれる。現在はJAXAを中心に課題の洗い出しを進めている段階で、来年度から本体開発に移行する。山川宏理事長は「人類の活動領域を大幅に拡大する役割を、日本が担うことになる」と意気込んでいる。

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