中国意識、行脚と対話 支援見劣り、募る危機感 上川外相・南西アジア訪問

 上川陽子外相(衆院静岡1区)が南西アジア地域のスリランカとネパールを訪問した。この地域で影響力を強める中国を意識し、地道な「行脚」と直接対話を通じて関係を強化したいとの意図がにじむ。近年は支援の規模で中国に見劣りしているのが実情で、危機感を募らせる日本のアジア外交は、一段と厳しさを増している。

スリランカ・コロンボ、ネパール・カトマンズ
スリランカ・コロンボ、ネパール・カトマンズ


 「債務問題や経済危機克服に向けたリーダーシップを評価し、最大限支援する」。上川氏は4日、スリランカのウィクラマシンハ大統領と会談し、日本の協力姿勢を鮮明にした。大統領は債務再編協議を巡る日本の貢献に謝意を伝えた。

 縮図
 日本は、経済危機に陥っているスリランカの債務再編にできるだけ早く道筋を付けたいとの立場だ。背景には、支援の金額よりも、対話を通じた課題解決で貢献するとの日本の戦略がある。最大の債権国である中国が、債務処理の条件交渉などを通じて影響力を強めることへの警戒感もある。
 中国への債務返済が滞ったスリランカ南部ハンバントータ港は、権益の大半が中国系企業に99年間にわたり譲渡された。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」による「債務のわな」の典型とされる。同様の事態が他にも拡大すれば、日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋」実現が難しくなるのは間違いない。
 上川氏は4日、日本、中国、インドなどの資本がそれぞれ拠点を建設しているコロンボ港を視察した。「スリランカが直面する現状の縮図」(外交筋)となっている場所を自ら訪れることで、日本の存在感を少しでもアピールしたいとの思惑が透ける。

 リスク
 5日に上川氏が足を運んだ内陸国ネパールは、かねて隣接するインドに大きく依存してきたが、近年は、ヒマラヤ山脈を挟んだ中国が関与を強めている。2017年に一帯一路を巡る協力で中国と合意。19年には習近平国家主席がネパールを訪れ、2年間で約530億円の支援を表明した。
 日本としては、ネパールが「後発開発国」からの脱却を目指す26年をにらみ、質の高いインフラ整備や災害対応の支援を通じて日本に引き寄せたいのが本音。だが、ネパールへの21年度の政府開発援助(ODA)は円借款100億円を含め約141億円で、金額では中国を大きく下回る。
 日本政府関係者は「巨額の支援を続ける中国に頼るリスクは周辺国も認識している。日本は長年築いた信頼を土台に効果的な支援を続けていく」と強調する。外交力が問われる局面が続く。
 (カトマンズ共同)

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