高校でもホカホカ「給食」 浜松工業高校・50年以上の歴史【給食のいま@しずおか③】

食堂入り口に展示されている献立の見本。
食堂入り口に展示されている献立の見本。

 「浜松工業高校は給食がありますよ。本当に助かりました」
(磐田市、主婦、藤田静子さん、80歳)
 「子どもが浜松工業高校で給食があり、とても助かりました」
(浜松市中区、保育士、49歳)

 給食アンケートに、こんな声が寄せられた。高校に給食があるなんて、私(記者)の周りでは聞いたことがなかった。浜松工業高(武田知己校長)に尋ねたところ、柳沢文之副校長が「全日制にも『給食』があります」と答えてくれた。全日制の給食の時間を訪ねた。 photo01 広い食堂には「会話厳禁! 大丈夫、気持ちは伝わってるよ」との貼り紙があった
 校内に設置された食堂は、座席600席。メニューは日替わりでカレー、麺、定食、丼の4種類が毎日並ぶ。量は大盛、中盛、並盛、小盛から選べる。弁当を持参する生徒も若干いるが、大多数が食堂を利用しているという。座席には新型コロナ対策のため、建築科の部活「建築研究部」お手製の木製仕切りが設置されていた。1食400円程度で、給食希望の生徒から毎月一括で徴収している。 photo01 お月見給食にちなみ、ウサギのイラストがたくさん掲示されていた
 3限終了直後の午前11時40分。3年生が食堂に集ってきた。この日は十五夜にちなんだ「お月見給食」。食堂にウサギのイラストが飾られ、白玉入りゼリーが提供された。生徒は入り口でその日の献立を確認。希望献立の受け取り口に並び、食事を受け取って座席で黙食していた。
 食器は縦20センチ、横30センチほどの“皿”。皿と言うよりトレイと言った方が分かりやすい容器だ。献立によるものの、大盛には拳3~4個分くらいのご飯が盛られていて、ボリュームに圧倒された。 photo01 オムライスの大盛りはご飯500グラム。一般的な茶わん1杯(150グラム)の3倍以上だった
 時間差で1、2年生も集ってきた。教員が「間隔をあけましょう」「食事が終わったら速やかに席をあけて」と呼び掛けていた。

 給食は生徒にも好評のようだ。兄姉に続いて同高に進学したという3年の柳沢里咲さん(17)は「温かくておいしい」と給食に満足の様子。2年の牧野稜央さん(17)は大盛を完食。「給食だと弁当箱を持参したり洗ったりしなくて良くて助かる」と笑顔を見せた。 photo01 食べるのが早い男子は、10分足らずで大盛を完食していた
 ところで、給食はいつから行われているのか。同高の創立80周年記念誌「永劫の幸」によると、昭和41年(1966年)5月に食堂が完成。当時は外部の給食会社による弁当だったが、「昭和43年1月より全日制在校生全員を対象にした完全給食を開始した」と記されている。 photo01 給食は味や温かさだけでなく、持ち物も少なくて済むという点でも好評だった
 学校給食法では「学校給食」を義務教育諸学校で実施される給食を指すため、同高の給食は同法で定める「学校給食」ではない。しかし、生徒に食事を提供するという広義の「給食」として、50年以上の歴史があるようだ。


 当時の報道によると、校舎の移転新築に合わせて全日制の給食が計画された。卒業生らの寄付で大規模な食堂が完成したという。現在は、昼には全日制の生徒1000人超、夕方には定時制の生徒約80人が利用する。

 同高のように、定時制のある高校は調理設備を備えているケースがある。県内の定時制のある県立高20校の中には、主に定時制の生徒を対象にした給食のための食堂を、全日制の一部生徒も利用可能とする高校がいくつかあった。

 例えば、浜松大平台高では全日制の生徒も昼に食堂でパンなどを食べられる。ただ、席数は現在70席程度で全日制の生徒の大多数は弁当持参だという。全日制の大部分を対象に完全給食を行う浜松工業高校は極めて珍しい存在だ。

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