記者コラム「清流」 手作り麩菓子、未来に継承
長さ80~90センチ、直径7センチ。ピンク色で野球バットのようなサイズの「さくら棒」が静岡名物と聞き、浜松市の麩(ふ)菓子製造業者を取材した。
ふんわりした食感。ほんのりと優しい甘さ。職人が焼き窯で丁寧に焼いた「手作りならではの味」だ。麩菓子は茶色でバリッとしたものと思っていた県外出身の自分は、まるで別物だと感じた。
「市内ではこの数年で2軒の同業者が廃業した。うちを含めて3軒しか残ってない」と経営者。大半が手作業のため大量生産はできないが、そこが誇りだ。生産性や利益の追求が全てではない。
工場併設の直売所には麩菓子を買い求める客が頻繁に訪れていた。「根強いファンがいるんです」。そう語る経営者の笑顔は充実して見えた。
(浜松総局・瀬畠義孝)