記者コラム「清流」 傷付いた伊豆山の歴史

 箱根路をわが越えくれば伊豆の海や沖の小島に波の寄る見ゆ-。熱海市伊豆山の北部の日金山に源実朝が詠んだ歌碑がある。険しい箱根の山を越えると眼前に広がる初島や相模灘の光景は今も昔と変わらない。
 伊豆山一帯は平安時代から修験霊場として栄え、多くの信仰を集めた。地域を歩けば現在も歌碑や石碑などが点在する。人々が歴史文化を守り続けてきた証だろう。
 しかし昨年7月、伊豆山を土石流が襲い、20人以上の命を奪い去った。原因は違法盛り土の崩壊。築いてきた由緒ある歴史も深い傷を負った。
 一体なぜ、盛り土業者に違法行為を許したのか。被災者のみならず多くの先人も知りたいはずだ。県と市は詳しい経緯を説明する責任がある。

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