「超高圧大量湧水の可能性」 JR、資料記載も説明せず【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線ルート選定時にJR東海が委託した地質調査の資料で、トンネルが貫通する大井川上流域部分に「超高圧大量湧水の発生する可能性が高い」と記載されていたにもかかわらず、水問題を議論した国土交通省専門家会議(2020年4月~21年12月)では同社が説明していなかったことが、6日までの取材で分かった。県が「消極的」と指摘する情報開示の姿勢によって具体的な減水対策の道筋がついておらず、同社の説明姿勢が改めて問われそうだ。=関連記事4面へ

「高圧湧水の恐れ」を理由にルートを回避したエリア
「高圧湧水の恐れ」を理由にルートを回避したエリア

 調査資料は、詳細ルートが示される半年前の13年3月にJRが委託した調査会社が作成した。利水者や県の公表要請を踏まえ、JRは20年10月の同省専門家会議で本県区間のうち、山梨県寄りの箇所は提示・説明したが、中央部は提示しなかった。
 本紙が入手した調査資料によると、該当部分は大井川最上流部で、地表から下り勾配で掘る非常口用のトンネル区間付近。地表からトンネルまでの深さが千メートルを超え、難工事が想定されている。資料は「施工上の留意点」として「断層周辺の破砕帯では超高圧大量湧水の発生する可能性が高く、切羽(トンネル先端)崩壊、著しい内空変位(トンネル内側の変形)の発生も予想される」と記されていた。
 複数のトンネル工学の専門家によると、湧水が高圧の場合は水を止める工法として一般的な「薬液注入」が効かない恐れがある。県内区間中央部の工事が遅れ、長野や山梨からの他工区の掘削が先行すれば、県外流出するトンネル湧水量が想定より増え、中下流域の減水影響が大きくなる可能性がある。「高圧湧水の恐れ」は山梨県内でルートを回避する理由にもなった。
 同社の工事担当者は取材に対し、地質調査資料について「地表の調査しかしていないエリアなので、(記載内容には)不確実性がある」と答えた。
 資料の公表に関し、金子慎社長は「専門知識を持った関係者による解釈や分析が必要なので、そのまま一部取り出して、大変危険があると報じられるのは正確さを欠く」との見解を示している。
 一方、複数の地質専門家は「公表しても全く問題ない」としている。

〈メモ〉高圧湧水時のトンネル掘削方法 岩石が砕かれた破砕帯や地盤の割れ目から水が染み込んだ場所では、トンネル先端から高圧の水が噴き出る場合がある。セメントなどを噴き出し口に入れて水を止める工法「薬液注入」は高水圧では難しい。代わりに、地盤に複数の穴を空けて地中の水を排出し、水圧を下げる工法が採られるが、地下水位が低下し、安定的に湧き出ていた地表の湧水が枯れる恐れがある。

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