静岡県、結論まで非開示 行政対応検証の職員聴取録【熱海土石流】
熱海市伊豆山の大規模土石流で崩落した盛り土の行政対応検証を巡り、県は22日までに、関係職員への聴取結果について「断片的な情報を開示すると誤解を招く恐れがある」として検証の結論が出るまで開示しないと判断した。静岡新聞社の情報開示請求への対応で明らかにした。ただ、検証作業を進める県の行政対応検証委員会は3月、参考資料として聴取結果の一部を公表していて、検証に関わる部署によって開示の判断が異なる状況になっている。
職員らによる内部検証チームは昨年11月、崩落した盛り土の行政手続きに関わった関係職員39人(退職者を含む)に対し、非公開で聴き取りを実施。県によると、担当者が手書きでメモを作り、録音はしなかった。聴取内容はメモを元に公開済みの公文書と照らし合わせる形で資料に整理し、検証委に提出。聴取内容は検証委が検証の根拠に用いている。
本紙がこの資料の開示を請求したところ、県は聴取内容を記した部分を非開示とした。「県民に不正確な理解や誤解を与えるなど、不当に県民の間に混乱を生じさせる恐れがある」などの理由で情報公開条例に基づいて判断したとした。
ただ、検証委は3月に中間報告を発表した際、参考資料として聴取結果の概要を既に開示している。資料には「『○○』の証言があった」などと、内部検証チームがまとめた資料に基づき、断片的な証言が記されていた。県の担当者は「検証委の資料公表に情報公開条例は適用されない」として問題はないとの見解を示した。
情報公開制度に詳しい前山亮吉県立大教授(政治学)は「ちぐはぐな対応だ。迅速な公開を行うのが県の務め。誤解を招くと何が不利益なのか説明もない」と問題視する。「検証の本気度が疑われる。現代の行政は、口頭での指導、やりとり、連絡、調整など文書化できない部分をいかに透明化し、検証すべきかという課題に応える必要がある」と指摘している。