菊川で大規模断水 情報早期発信と点検を【解説・主張しずおか】

 菊川市内で発生した断水は原因の特定に時間がかかり、影響が広範囲に及んだ。さらに、市民への情報提供が遅れたことで不安が広がった。水道管の老朽化は全国的な問題となっており、同様の事態が今後再発する可能性もある。市は住民生活に直結するライフラインの備えを再点検し、非常時の情報発信についても見直してほしい。

給水車から水を配る菊川市職員(中央)。断水の影響は長期化した=23日、同市役所
給水車から水を配る菊川市職員(中央)。断水の影響は長期化した=23日、同市役所


 菊川市の断水や水圧低下は20日夜に発生し、23日まで続いた。影響を受けたのは住宅が密集する六郷、河城、西方、加茂、内田地区の一部で、最大で約6700世帯。市内の約3分の1の世帯に影響が出た。市は18日に水を一時的にためる配水池の水位が平常時の半分以下になったことを受け、漏水調査を開始していたが断水を回避できなかった。
 ところが、市が断水の情報を市のホームページや公式LINE(ライン)などで発信したのは発生翌日の21日午前9時40分。同報無線が流れたのは、それから4時間後の午後1時40分だった。
 市からの情報提供が遅れたため、水道設備会社には早朝から「わが家だけに異変が起きているのかも」と不安に思った市民からの問い合わせが相次いだ。「先が見えないから、生活の計画が立てられない」「ある程度の目途を知りたい」といった不満の声もあった。
 原因とされる破断した水道管は22日夕方、同市西方の東名高速道側道下の地中で見つかった。水が道路の表面ではなく排水路から出ていたため、発見が遅れたという。長谷川寛彦市長は「長く水道課にいた職員にとっても想定外の事例だった。経験則だけでは対処できないので、さまざまな事例を学ぶ必要がある」と述べた。
 市によると、破断した水道管は設置から50年が経過していた。老朽化が原因とみられるが、道路は起伏があり、大型車の通行が多いため重みに耐えきれなかった可能性もある。市は水道管の更新目安を60年としているが、今回のように道路形状や交通量によっては期間を待たずに破損する場合もある。
 非常時に市民に情報を早期に、また継続的に発信することは、安心を与えるだけでなく命を守る行動につながる。近年は自然災害が頻発し、市内では昨年だけでも竜巻とみられる突風と大雨の被害があった。南海トラフ巨大地震をはじめ、大規模災害が発生したら想定外の事案の連続になる。今回の断水を教訓に、市の情報提供体制の強化が求められる。
 (掛川支局・伊藤さくら)

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