多彩な顔持つ大砂丘 今「映えスポット」に 浜松・中田島地区

夕日でオレンジ色に染まる中田島砂丘=5月中旬、浜松市南区
夕日でオレンジ色に染まる中田島砂丘=5月中旬、浜松市南区
コウボウムギとコアジサシ(サンクチュアリNPO提供)
コウボウムギとコアジサシ(サンクチュアリNPO提供)
海を目指す子ガメ(サンクチュアリNPO提供)
海を目指す子ガメ(サンクチュアリNPO提供)
浜松まつりで一斉に舞い上がる参加各町の大凧=5月3日、浜松市南区
浜松まつりで一斉に舞い上がる参加各町の大凧=5月3日、浜松市南区
夕日でオレンジ色に染まる中田島砂丘=5月中旬、浜松市南区
コウボウムギとコアジサシ(サンクチュアリNPO提供)
海を目指す子ガメ(サンクチュアリNPO提供)
浜松まつりで一斉に舞い上がる参加各町の大凧=5月3日、浜松市南区

 浜松市南区の中田島砂丘は、遠州灘から吹き付ける風によって描かれる風紋が有名だ。夏にはウミガメが上陸して産卵。地元NPOが保護し、ふ化後に子ガメを海に放流する。浜松まつりの凧場(たこば)があり、5月には各町の大凧が青空に舞う。2年前、東日本大震災の津波被害を教訓に、東西17・5キロの防潮堤が完成した。季節や天候、時間帯ごとに、多彩な顔を持つ中田島地区。近年は若い世代などの間で、会員制交流サイト(SNS)の「映えスポット」として新たな一面ものぞかせる。
 浜松市の南端に広がり、日本三大砂丘の一つに数えられる中田島砂丘。かつては浜松っ子の遠足訪問先の定番であり、観光用にラクダが見られた時もあった。近年は、SNSで“映える”名所として「若者の来訪者が増えている」と中田島砂丘観光協会の松下克己代表(55)は実感する。
 インスタグラムで「#中田島砂丘」を検索すると、約4万4千件の投稿がヒット。パートナーや友達と訪れたり、サイクリングで立ち寄ったりするスポットとしての人気ぶりが伝わる。ヒット数は市内の「#浜松城」に匹敵するほどだ。
 中田島地区一帯の魅力発信を目指す同協会は毎月第3日曜に遠州灘海浜公園の松林で、古本屋やドリンク店が出店するマルシェ「こかげかふぇ」や、地域の植物に触れるプログラムなどを企画する。松下代表は「中田島を訪れるきっかけになれば。みんなが楽しい時を過ごしてほしい」と思いを語る。
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 ■ウミガメ産卵/絶滅危惧の鳥営巣 希少動植物、地域一体で守る
 中田島砂丘を含む遠州灘海岸一帯は絶滅危惧種「アカウミガメ」の貴重な産卵地。例年は5月中旬から8月下旬に母ガメが上陸し、ゴルフボール大の卵を産み落とす。
 砂丘入り口に活動拠点を構えるNPO法人「サンクチュアリエヌピーオー」は、アカウミガメの卵や子ガメの保護と調査活動を35年以上続ける。頻発した盗掘対策として、産卵時期には会員が毎朝、海岸を歩く。産卵を確認すると、卵を回収し、保護柵の中で管理する。
 子ガメ放流時には地域の子どもを招き、波打ち際から海へ送り出す。実際にカメに触れてもらうことで、保護の大切さや生命の尊さを伝えている。
 海岸では絶滅危惧種「コアジサシ」のコロニー(集団営巣地)や海浜植物「コウボウムギ」なども保護する。砂浜の減少が問題視されるようになり、県は2006~15年に天竜川の土砂を使った養浜事業を行った。だが、同NPOの馬塚丈司理事長は「事業によって海岸が石で覆われ、希少生物にも影響が出ている」とみる。「コウボウムギなどに風で運ばれた砂が堆積する。砂に埋もれると成長して顔を出し、さらに砂を蓄える」。海浜植物保護による砂浜形成がより有効だと訴える。
 住民や企業が参加する海岸清掃は年間80回に上り、プラスチックごみなど約15トンを回収する。馬塚理事長は「希少な動植物が生息する海岸は、地域の誇り。地元の協力があってこそ守られる」と強調する。

 ■熱気 凧揚げ合戦  
 砂丘から防潮堤を隔てた内側に、浜松まつりの凧場がある。1967年に会場となり、例年5月3~5日はラッパの音とともに、熱気のこもった凧揚げ合戦が繰り広げられる。
 子どもの成長と町の発展を願い、大凧を揚げる。今年は169町が参加し、3日間で約12万人が来場した。砂丘からほど近い浜松まつり会館では、展示や映像を通じて凧場の臨場感を体験できる。

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