年内にも最終意見書 袴田さん差し戻し審 弁護団と高検

 旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑判決が確定し、裁判のやり直しを求めている袴田巌さん(86)の差し戻し審で、東京高裁と東京高検、弁護団による3者協議が27日、高裁であった。高裁は7~8月に証人尋問を実施した後、11月上旬に高検の「みそ漬け実験」に立ち会う意向を示したほか、弁護団と高検が年内にも最終意見書を提出する今後の流れを確認した。
 袴田さんの犯行着衣とされる「5点の衣類」は事件から1年2カ月後に現場のみそタンクで見つかり、血痕の色は当時の捜査資料に「濃赤色」とあった。弁護団は差し戻し審で、みそ漬けの血痕が黒色化するメカニズムを化学的に示し、長期間みそに漬かると「血液の赤みは残らない」と結論付けた鑑定書を提出。「1年以上タンクのみそに隠されていたとは言えず、袴田さんの犯人性は完全に否定された」と主張している。
 証人尋問は7月22日と8月1日、同5日に行う。弁護団の鑑定書を手掛けた法医学者ら3人と、弁護団の主張に否定的な法医学者2人が証人として出廷する。袴田さんの姉ひで子さん(89)も同席する予定だ。
 3者協議終了後に記者会見した弁護団の西嶋勝彦団長は「鑑定人の証言によって鑑定書の価値がいっそう高まり、裁判官に納得してもらえる結果になると自信を持っている」と述べた。
 一方、高検は昨年9月から静岡地検で、布に血液を付けて血痕をつくり、みそ漬けにして血痕の色の変化を調べる「みそ漬け実験」に取り組んでいる。1年2カ月が経過する今年11月まで続けることを了承したという。弁護団の小川秀世事務局長は「(血痕の色は)完全に黒くなると思う。裁判官に実際に見てもらうことは重要だ」と強調した。

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