記者コラム「清流」 前進しなきゃ意味がない

 鹿児島県の「大崎事件」で、無実を訴えながらも殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(95)の再審可否を巡る決定の速報を、袴田巌さん(86)と姉ひで子さん(89)の自宅で一緒に待たせてもらった。
 袴田さんも原口さんも再審開始決定を受けた後、検察側の抗告で取り消された共通点がある。ひで子さんにその点を尋ねると、「検察官に恨みはないよ。恨んでもしょうがない」と言うから驚いた。
 「悪口を言って留飲は下げられるかもしれないけれど、留飲を下げても仕方がない。前進しなきゃ意味がないの。抗告できる制度になっている以上、悪いのは制度。制度を直さないといけない」とも。
 そうだった。ひで子さんはそういう人だった。合理的で強く、誰よりもどんと構えている。そう、前進こそ必要だ。
 (社会部・佐藤章弘)

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