記者コラム「清流」 波打ち際の攻防

 波打ち際に集まったフグたちが一斉に水しぶきを上げ、彼らを狙うウツボの大きな口が丸くふくれた体を捉える。伊東市川奈の海岸では7月上旬にかけて、小型のフグ「クサフグ」の産卵シーズンを迎えた。命をつなぐための必死の攻防に胸を打たれた。
 自然相手の撮影は時間がかかる。通うこと4日。ようやく産卵の様子を確認できた。雌が石の隙間に産卵すると、雄が跳ね回りながら放精し、海水が白く染まる。習性を知らなければ驚きを禁じ得ない、多くのフグが岸辺に打ち上げられている異様な光景が広がっていた。
 現地には1カ月かけて産卵を取材しているという海外メディアの姿もあった。生命の神秘を感じる光景に感動するとともに、その場に立ち会えた幸運に感謝した。
 (東部総局・山川侑哉)

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