リモート副業、経営に新戦力 大都市大手社員が静岡県内中小支援

 新型コロナウイルス禍でテレワークが普及したことで、大都市圏の在住者が大手企業に勤めながら県内の中小企業にオンラインで経営支援する「リモート副業」に注目が集まっている。事業者側は雇用や外注よりも安価で支援を受けられる利点があり、50代の副業人材の中には「第二の人生(セカンドキャリア)」の入り口と位置付ける人も。シニア層の働き方改革につなげようとする動きも出てきた。

兵庫県在住の副業人材とパソコンのリモート機能を使って打ち合わせする岩科慎吾さん=6月下旬、静岡市葵区
兵庫県在住の副業人材とパソコンのリモート機能を使って打ち合わせする岩科慎吾さん=6月下旬、静岡市葵区

 びょうぶなどの製造を手掛ける「人形の宝照」(静岡市葵区)の岩科慎吾さん(32)は4月から毎月2回、パソコンを使ってオンラインの打ち合わせをし、今後の経営方針を検討している。相手は兵庫県在住の百貨店バイヤー伊藤栄さん(58)。岩科さんは「業界の外から、固定観念にとらわれず助言してもらえる」と意義を語る。
 定年退職を前に今春から副業を本格的に始めたという伊藤さんは「退職せず再雇用される方が収入は安定するが、自分の強みを生かして次のステージに挑戦したい。企業の利潤にとらわれず社会貢献したい」と独立を視野に入れる。現在3社の副業をしていて「ウェブを使えば本業に支障は出ない」と言う。
 飼料・肥料を製造する伊豆川飼料(同市清水区)の伊豆川剛史取締役(42)は、航空会社や大手新聞社に勤める副業人材2人を経営戦略策定に活用した。「小さな会社なので専属のコンサルタントを雇う余力はない」とし、リモート副業について「(人材の)交通費もかからず、スケジュールも合わせやすい」と利点を強調した。
 県内企業と副業人材のマッチングを進めている静岡商工会議所によると、2019年度以降、業界を問わず約60社の地元企業が副業を活用したという。

 ■副業解禁 静岡県内はまだ鈍く
 静岡県内の企業の間で副業解禁の動きはまだ鈍く、副業を希望する人材は首都圏の企業に勤める人が圧倒的に多い。しかし、静岡商工会議所によると、地域事情に精通した副業人材を求めるニーズもある。同商議所は静岡市と連携し、定年退職者を含めた50、60代に照準を定め、シニア雇用を意識した副業人材の輩出や活用を地元企業に促す方針だ。
 帝国データバンク静岡支店の調査によると、2021年時点で副業・兼業を認める県内企業は23.7%。19年度以降、同商議所のマッチング事業に応募した人材は大都市圏在住が8割を占めた。
 同商議所の谷合さゆり事業マネージャーは県内の事業者に向けて「(社外の)副業人材をまず使ってみてほしい」とした上で「(自社でも)副業を解禁すれば長期的に自社の成長につながるはず」と呼びかける。
 労働時間管理などの課題は残るが、国も多様な働き方の一つとして副業の普及を後押しする。静岡市シニア就労支援窓口「ネクストワークしずおか」の一ノ宮由美マネージャーは「副業を経験すれば企業から望まれる人材を意識するきっかけになり、シニア層はセカンドキャリアにも結び付く」と指摘する。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞