袴田さん差し戻し審 鑑定人尋問始まる 東京高裁

 旧清水市(静岡市清水区)で1966年、みそ製造会社の専務一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(86)の第2次再審請求審で、事件から1年2カ月後に見つかった「犯行着衣」に付着した血痕の色を巡り、法医学者ら専門家の証人尋問が22日午前、東京高裁(大善文男裁判長)で始まった。同日と8月1日、同5日の3日間で計5人を尋問する。弁護団は、差し戻し審の「ヤマ場」と位置付けている。

証人尋問のため東京高裁に向かう袴田巌さんの姉ひで子さん(右端)と弁護団=22日午前9時45分ごろ、東京都千代田区
証人尋問のため東京高裁に向かう袴田巌さんの姉ひで子さん(右端)と弁護団=22日午前9時45分ごろ、東京都千代田区

 事件現場近くのみそタンクで発見されたシャツなど「犯行着衣」の血痕には赤みが見て取れるが、弁護団は1年以上みそに漬かっていたとしては不自然だと主張してきた。審理を高裁に差し戻した2020年12月の最高裁決定は「みそ漬けされた血液の色調の変化に影響を及ぼす要因」について、専門的知見を踏まえて審理を尽くすよう求めた。
 弁護団は21年11月、長期間みそ漬けの血痕が「赤みを保っていることはあり得ない」と結論付けた法医学者による鑑定書などを新規かつ明白な証拠として高裁に提出。鑑定を踏まえ「袴田さんの犯人性は完全に否定された」と訴えている。
 一方、高検側は「血痕に赤みが残る可能性は十分に認められる」と反論する。
 22日の証人尋問は、鑑定書を手掛けた法医学者2人に対して実施。みそ漬けの血痕が黒色化する化学的なメカニズムや、鑑定方法などを尋ねる。8月1日は弁護団の主張に否定的な高検側請求の法医学者2人が、同5日は弁護団請求の物理化学の専門家が出廷する。いずれも非公開だが、袴田さんの姉ひで子さん(89)の傍聴は認められている。

あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞