パリは「自分の出番」 パラ競技の三輪自転車・福井万葉(静岡)

 東京パラリンピックからもうすぐ1年。地元開催の大舞台を逃した三輪自転車の福井万葉(かずは、21)=静岡市清水区=が2024年のパリ大会に向けて挑戦を続けている。東京パラを機にパラスポーツへの関心が高まる中、脳性まひがある福井は「同じ障害を抱える人たちに勇気を与えたい」と誓う。

パリパラリンピックを目指し、挑戦を続ける福井万葉。三輪自転車に共生社会実現への願いを込める=7月上旬、伊豆市
パリパラリンピックを目指し、挑戦を続ける福井万葉。三輪自転車に共生社会実現への願いを込める=7月上旬、伊豆市

 「人生が変わり、世界が広がった」。三輪自転車に出合ったのは静岡大成高在学時、県障害者スポーツ協会などが行った選手発掘事業に参加したのがきっかけだった。
 それまで取り組んだ陸上競技の短距離と投てきでは芽が出なかったが「限界まで自分を追い込めるのが魅力」。三輪自転車に乗ると、持ち前の持久力ですぐ頭角を現した。
 東京パラは出場を逃し、テレビ観戦した。一流選手の走りを見て技術を学ぶとともに「次は自分の出番」。大きな応援を受ける様子を目の当たりにして意欲を新たにした。
 身長157センチ、体重55キロ。自転車選手としては小柄で、空気抵抗が少ないのが強み。5月にドイツで行われたW杯で初めて4位に入賞し「得意の登り坂で世界に通用することが分かった」と胸を張る。
 三輪で難しいのはコーナリング。平たんなコースで大柄な外国人選手のパワーに対抗するには、技術とスピードの向上が必要だ。ただ、三輪の選手は現在、国内で1人だけ。専門のコーチは不在で、カーブでの体重移動について自ら研究しながら、筋力トレーニングにも励む。
 言語と運動機能に障害があり、無意識で急に力が入る不随意運動も現れるが「脳性まひをマイナスに思ったことはない。自分がやりたいことを思い切りできている」。家族ら周囲の支えを受け、常に前を見つめてきた。
 勤務先は放課後等デイサービス事業所で、発達障害や自閉症などの子どもを支援指導する。「今はパリに向け競技に集中してるが、将来は障害を抱えた人たちが活躍できる居場所をつくりたい」。自らの挑戦の先に、共生社会の実現を願う。

 ■静岡県内 新星の発掘課題
 東京パラリンピックでは県勢パラアスリートが多くのメダルを獲得し、国内外に存在感を示した。ただ、自転車の杉浦佳子(掛川西高出)は50代、ボッチャの杉村英孝(伊豆介護センター)は40代。競泳の鈴木孝幸(聖隷クリストファー高出)と陸上の佐藤友祈(静清工高出)も30代で、新星誕生に期待が掛かる。
 県はパラアスリートの発掘・育成支援とパラスポーツの裾野拡大に向け、本年度に推進協議会を設置しハード・ソフト両面で検討を進める。杉山金吾県障害者スポーツ協会専務理事は「トップ選手を支援育成する体制を維持するのと同時に、障害の有無にかかわらず誰でもスポーツできる環境をつくることが重要」と指摘する。

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