記者コラム「清流」 疑問だらけの「検証」

 27人の尊い命が犠牲になった昨年7月の熱海市伊豆山の大規模土石流で、県や市の行政手続きを検証した県行政対応検証委員会の対応に驚いている。砂防ダム上流の砂防規制放置の経緯など、肝心な部分は「手が回らなかった」として十分検証しなかった。
 砂防規制を担当した歴代職員への事情聴取は検証終了後で、検証結果に反映されていない。検証対象は崩落した盛り土(積み上げた残土)に限り、周辺の開発行為との関係も不透明。本紙は改めて委員長の青島伸雄弁護士に経緯説明を求めたが応じなかった。
 盛り土の現旧所有者や関係業者、行政(国、県、市)の対応次第で防げた未曽有の「人災」。その検証は訴訟や再発防止の材料になる。同委員会には「検証」を後世に残す重大性を認識してほしい。

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