水車の公園、響く音楽 浜松市西区・伊佐見地区【わたしの街から】

月夜、静かに回り続ける「森の水車」。ライトを当てると森の中に幻想的に浮かび上がった=浜松市西区伊左地町
月夜、静かに回り続ける「森の水車」。ライトを当てると森の中に幻想的に浮かび上がった=浜松市西区伊左地町
月夜、静かに回り続ける「森の水車」。ライトを当てると森の中に幻想的に浮かび上がった=浜松市西区伊左地町

 浜名湖の東側に位置する浜松市西区の伊佐見地区。伊左地、佐浜、大人見・古人見の地区名から一文字ずつを取って「伊佐見」。里山に囲まれた自然豊かなこの土地に、「森の水車公園」と親しまれる緑地がある。
 

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 東名高速道の浜松西インターチェンジから車で約10分。市が管理する伊左地緑地公園で趣のある木製水車が静かに回る。この水車小屋は1986年、地元出身の作詞家清水みのる(1903~79年)が手がけた童謡「森の水車」にちなんで造られた。清水は故郷の伊佐地川沿いの水車を題材にしたと伝わる。
 水車小屋は清水の母校伊佐見小(同区)PTAを中心とした「伊佐見の子供を育てる会」が、住民から寄付を募って設けた。伊佐地川の景観や環境を守り、子どもたちに地域に親しみをもってほしいと願った。
 
清水みのる作詞の「森の水車」の歌碑。木漏れ日と森の緑が映り込んだ=浜松市西区伊左地町
 

 清水は伊佐見村に生まれ、浜名湖畔の自然に親しみながら育った。伊佐見小から旧制浜松中(現浜松北高)に進んだが、中退。詩人佐藤惣之助に私淑し、詩の道を歩んだ。
 公園では毎年10月、伊佐見協働センターなどが主催する「伊佐見ふれあい水車小屋コンサート」が開かれている。児童や音楽愛好家らが「森の水車」の合唱をはじめ、童謡やポップスの演奏を披露する。緑に囲まれ、水車が回るのどかな風景の中で、音楽に触れる時間を演出している。
 水車小屋コンサートはコロナ禍で中止が続いたが、今秋は3年ぶりに開催を予定する。同センターの伊賀智裕所長(59)は「水車小屋と清水みのるは伊佐見の誇り。今後も語り継ぎたい」と話す。
 コトコトコットン、コトコトコットン…♪
 水車が回る公園には住民が奏でる音楽がこれからも響く。
 

作詞家清水みのる 郷土愛脈々 伊佐見小児童、歌を継承

 浜松市立伊佐見小(西区)の校歌は清水みのるが作詞を手掛けた。校内の中庭には緑地公園と同じく水車が設置されているほか、直筆の原稿や清水が集めていたという郷土玩具などを展示する「清水みのるの部屋」がある。児童は偉大な先輩の存在を身近に感じながら学んでいる。
 
写真や原稿などが並ぶ伊佐見小内の「清水みのるの部屋」。児童は授業などで卒業生の功績を学び、歴史をつないでいる=浜松市西区伊左地町
 

 こちらの水車は1989年に整備され、今も回り続けている。冬に氷や霜が水車に張ると、子どもたちは大喜び。6年生は卒業前に感謝の思いを込め、水車を清掃する伝統がある。
 毎年、入学間もない1年生が音楽の授業で校歌とともに「森の水車」を習い、歌の継承に取り組む。今年は4年生の新村龍正君と田中里桜さんが7月、国語の授業で清水みのるについて調べて「新聞」にまとめた。
 清水みのるの部屋の展示品を写真とともに紹介した新村君は「清水みのるがどんな人なのか気になった」ときっかけを語った。生い立ちをまとめた田中さんは「調べていたら、自分たちを見守ってくれているような気がした」とほほ笑んだ。

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